【5月19日 AFP】最近、南アフリカの新聞に「国際サッカー連盟(FIFA)共和国にようこそ」という見出しが掲載された。「自分たちの」サッカーW杯をFIFAが支配していると感じている南アフリカ人の不満を表しているのだ。

■キーホルダーがFIFAの著作権に違反

「W杯で利益を得るのは、FIFAだけだ」と不満をこぼすのは、Grant Abramhamseさん。彼は、キーホルダーを作ってW杯開催中にサッカーファンに販売しようと考えている意欲的な起業家だ。

 ところが、FIFAは彼に、南アフリカの国旗と「2010」という年号、地元に愛されるトランペット「ブブゼラ」をあしらったキーホルダーは著作権に違反すると通告してきた。

「ダビデとゴリアテ(伝説の巨人の名)みたいだ。わたしがダビデで、FIFAがゴリアテだ」(Abramhamseさん)

 Abramhamseさんによると、キーホルダーの製造販売計画について2004年に南ア政府から許可を得たが、翌05年、FIFAから停止通告状を受け取ったのだという。FIFAは「World Cup(W杯)」「2010」「South Africa(南アフリカ)」という用語と、これらの用語を組み合わせたものに著作権を所有している。

 Abramhamseさんは「FIFAは独裁的で規範的だ。FIFA自身や金のためだけの連盟で、他の人たちのためのものではない」と話す。

■「非公式国内航空会社」の広告にも厳しく対応

 南アフリカ人の多くは、FIFAがW杯開催国に課したルールに不満を表し、W杯そのものを奪われたと感じている。

 FIFAは、多額を支払ってW杯の独占権を得た公式パートナーを保護しようと、アンブッシュ・マーケティング(公式契約を結ばないものが、違法にロゴを使用したり会場周辺で販売したりすること)451件の調査を始めている。

 エミレーツ(Emirates)航空を公式パートナーに持つFIFAは、南アフリカの格安航空会社、クルラ(Kulula)航空に対し、サッカースタジアムと選手の写った「『あれ』の非公式国内航空会社」とうたった広告を撤去するよう要請した。

 FIFAは、「小企業に対し、FIFAは非攻撃的かつ教育的アプローチで寛大に対応している。多くのケースは著作権侵害者側との対話で決着している」と述べ、自身に対する「権威主義」というレッテルをはねつける。

■棒付きキャンディーも「ダメ」

 しかし、FIFAは、W杯をテーマにした棒付きキャンディーの製造中止命令を勝ち取ったほか、南ア・プレトリア(Pretoria)のスポーツバーに対し、W杯を歓迎する横断幕を屋根から降ろさせた。

 商標代理人のAndre van der Merweさんは、「棒付きキャンディーに?本当なのか?棒付きキャンディーがW杯を妨害するのか?棒付きキャンディーの製造メーカーが公式スポンサーの収益を奪ったりなどしないだろう」と話す。

「FIFAは攻撃的すぎるから、皆W杯を楽しみにしているのにFIFAのことが大嫌いなんだ。皆、FIFAが国を支配していると考えている」(van der Merweさん)

■主催都市にも厳しい制限

 販売ルールは別としても、6月11日から開催されるW杯南アフリカ大会を主催する9都市も、スタジアム周辺や会場外の試合観戦エリア、その他の公式会場での活動を制限するルールを受け入れなくてはならなかった。

 憲法学者のPierre de Vosさんは「特定の場所での宣伝行為は、市の特別許可がない限り基本的に禁じられており、極端に広範囲にわたって禁止されている。このルールが厳格に実施されれば、表現の自由の問題にかかわってくる。このような禁止は厳しすぎる」と話す。

「スタジアムの外だけでなく、スタジアム周辺、ファンが集まる場所付近での商品の売買が厳しく制限されており、過剰な制限だと思う」「ルールの多くはFIFAの金銭的利益を保護するためのもので、W杯主催を成功させることとはまったく関係ない」

 De Vosさんは、南アフリカ人はW杯で、限られた利益しか得られないのではないかと懸念する。「期待したほど経済的な利益が得られなければ、皆はFIFAにさらに幻滅するだろう」

(c)AFP/Charlotte Plantive