【6月9日 AFP】金融危機のなか、世界の金融の中心地スイスでスパイ活動が急増している。スイスの情報当局がAFPに明らかにした。

 スイス国防省で約120人が所属する情報部門を率いるJuerg Buehler氏は、「金融危機と金融機関同士の競争で、金融関連情報への関心が強くなっている」と語った。特に、銀行ネットワークに侵入する機会をうかがうハッカーらによるサイバー攻撃が多いという。

 スイス当局は、2008年に外交官の地位をもつ21人の入国を拒否した。07年は8人、06年はたった2人だった。

 情報当局の年次報告書によると、スパイの大半は、外交官かジャーナリストとしてスイスに侵入するという。「この方法だと、疑いを向けられずに情報収集したり、人と接触をすることができる」。スパイである可能性が最も高いのは、翻訳者やインターンなども含め、外交官関連の職員だという。

 また、サイバー攻撃も発見されている。Buehler氏によると、サイバー攻撃の一部はアジアや中国を経由しているが、実際にどの国から行われているのかを知ることは不可能だという。

 年次報告書によると、研究機関や各業界のトップレベルの技術をもつ企業があるスイスへの関心は変わらず高い。また、多くの国際機関がスイスに設置されており、それらが重要貿易や金融センターとしての役割を担っていることも外国の情報機関にとってスイスが魅力的な標的となる理由として挙げられる。

 スイスの隣国リヒテンシュタインでは、ドイツのスパイ機関がリヒテンシュタインの銀行の顧客情報を入手した結果、リヒテンシュタインの銀行側が脱税を教唆(きょうさ)していたのではないかとの疑惑が発覚し、米国を含む大国の怒りを呼ぶ事態が起こったことがある。(c)AFP/Andre Lehmann