【3月9日 AFP】米財務省の幹部人事が難航し、大恐慌以来最悪の経済危機への対処に追われるティモシー・ガイトナー(Timothy Geithner)米財務長官(47)が、昼夜を問わぬ文字通りの孤軍奮闘を強いられている。

■政権発足1か月、決まった幹部は1人だけ

 1月末のオバマ政権発足から1か月以上が経過した現在までに、上院の承認を必要とする財務省幹部職15ポストのうち、就任が決まったのは前政権から残留したスチュアート・レビー(Stuart Levey)次官1人だけ。しかも、同次官の担当はテロ・金融情報で、経済危機問題での補佐は専門外だ。

 6日発表の雇用統計は、2月だけで新たに65万1000人が職を失い、米経済が1981-82年の不況を超える深刻な状況にあることを改めて示した。早急な対策が求められるが、ガイトナー長官を支える財務副長官、国際金融担当次官はおろか、副次官ポストでさえも、いまだ空席となっている。

■有力候補が相次ぎ辞退

 副長官に有力視されていたアネット・ナザレス(Annette Nazareth)元証券取引委員会(SEC)委員は、米経済紙ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street JournalWSJ)電子版が関係筋情報として報じたところによると、身元調査が長期に及ぶことを理由に候補指名を辞退した。

 また、ガイトナー氏が国際問題担当次官に推していた国際通貨基金(International Monetary FundIMF)のキャロライン・アトキンソン(Caroline Atkinson)氏も、4月にロンドン(London)で開催される主要20か国・地域(G20)金融サミットまで数週間というタイミングにもかかわらず、指名を辞退している。

■長官は「すでに手一杯」の声も

 こうした中、財務省は急きょ、ワシントンD.C.(Washington D.C.)にあるピーターソン国際経済研究所(Peterson Institute for International Economics)のエコノミスト、テッド・トルーマン(Ted Truman)氏を、ガイトナー長官の国際金融問題における補佐役に暫定的に起用した。

 ガイトナー長官はブッシュ前政権時代にニューヨーク連邦準備銀行(Federal Reserve Bank of New York)総裁を務め、以前から景気回復対策に務めてきた人物だが、経済評論家の中には、山積する問題にガイトナー長官はすでに手一杯になっているとの見方も出ている。(c)AFP