【8月11日 IDO Securities】2008年8月8日、北京オリンピックが開幕した。中国において「財を成す」を意味する「發財」の「發」と数字の「8」の発音が同じであり、縁起の良い数の並びが開催日として選ばれた。中国の映画監督チャン・イーモウ氏が総指揮を執り、総額400億ドルが費やされた壮大な開会式に感動された方々も多いと思うが、同じ8月8日、ロシアとグルジア間で戦闘が開始された。国連安全保障理事会は9日、グルジアの南オセチア自治州情勢について非公開協議を開き、停戦を呼び掛ける声明案を話し合ったが、合意に至らず。平和の祭典と平行して、地政学リスクが再浮上している。

 週末にドル円は、110円乗せとなったが、ドル高の一因である原油下落が一服するのか否かに注目したい。昨年は8月1日に高値を付けた後、8月22日まで反落。その後、年末に向けて切り返しを見せた。今年も、昨年と高値を合わせてみると、類似したチャートパターンを演じており、注意したい。2005年にハリケーン「カトリーナ」がメキシコ湾岸を襲ったのが、8月25日。今年の一目均衡表では、同じ時間帯に雲のねじれが存在しており、17日の満月~月末に向けて変化の起こり安時間帯になる。

 ユーロ安がドル安のもう一つの要因だが、注目は14日のユーロ圏とドイツの4―6月期の国内総生産(GDP)統計。実質成長率が市場予想を下回れば、ユーロ売り・ドル高になる可能性。13日には日本の4―6月期のGDPも発表予定されている。お盆休みで薄商いが予想される中、ボラティリティが高まる可能性にも留意したい。

 テクニカル面からは、110円水準は、2007年6月高値~2008年3月安値までの下げ幅に対する50%押し水準で、週足の一目均衡表の雲とも重なる。遅行線は好転しており、110円水準を固めてくるようだと、61.8%戻しの113.29円が意識されることに。この110円水準の攻防が今週の焦点だ。ただし、ここから更にドルが上昇するためには、米景況感の改善を受けたFed利上げ期待の高まりなどのドル買い材料が必要で、水曜の小売売上、木曜の新規失業保険申請件数、金曜のNYFedインデックス、鉱工業生産、ミシガン大消費者景況感指数などにも注目したい。

 87年以降の8月のドル円を振り返ってみると、「円高傾向」が確認され、特に日米金利差が2%以下の際には、円高ドル安になる確率は高く、今回のドル反発が新たなドル高トレンドの開始と判断するのは、時期尚早か?


(投資情報部 菊川弘之)
NPO法人日本テクニカルアナリスト協会検定会員(CFTe)ラジオNIKKEI(北浜流一郎・菊川弘之の朝一投資大学)をはじめ、時事通信等でアナリストの目、テクニカル分析情報を掲載。ブルームバーグTV、日経CNBCなど多数のメディアにも出演中。商品先物関係のアナリストとして著名だが、日経平均先物オプション取引や外国為替取引の分析でも定評がある。

[当情報は情報提供を目的としており、当社取り扱い商品に係わる売買を勧誘するものではありません。内容は正確性、完全性に万全を期してはおりますが、これを保証するものではありません。また、当情報により生じた、いかなる損失・損害についても当社は責任を負いません。投資に関する最終決定は、お客様ご自身の判断でなさるようお願いいたします。]

(c)アイディーオー証券株式会社
【関連情報】