【1月18日 AFP】騒音や悪臭がひどく信頼性も低いとして、米市場でディーゼル車が敬遠されるようになって20年。ドイツと日本の自動車メーカー各社が、クリーンディーゼル技術で新世代ドライバーの獲得に意気込みをみせている。

■日本・ドイツ勢、相次ぎ新車種投入

 ホンダ(Honda Motor)は先ごろ、高級車ブランド「アキュラ」に08年からクリーンディーゼル・エンジンを搭載する計画を発表。トヨタ自動車(Toyota Motor)も13日、トラック「タンドラ」とSUV車「セコイア」のクリーンディーゼル・エンジン・タイプを米市場に「近い将来」導入することを明らかにしている。

 ドイツ勢では、ダイムラー(Daimler)がメルセデス・ブランドのディーゼルエンジン・タイプの売れ行き好調を発表しており、年内にもディーゼルエンジン搭載の新型SUV車を3モデル、米市場に投入するとしている。BMWとフォルクスワーゲン(Volkswagen)も今秋、ディーゼル車を発表予定だ。

■米メーカーは同調せず

 だが「高性能・高燃費」なディーゼル車で消費者獲得を試みる国外メーカーの動きに、国内メーカーが同調する様子はない。

 たとえばフォード・モーター(Ford Motor)は2010年、ピックアップトラック「F-150」にディーゼルエンジン・タイプを導入するが、小型車にクリーンディーゼル・エンジンを搭載する計画はないという。

 代わりに同社では、より求めやすい価格で20%の燃費向上を実現する「エコブースト・システム」搭載車を年間50万台生産予定だ。

 ディーゼル・エンジンはガソリン・エンジンに比べて30-35%程度燃費がいいとされる。しかし、前年新たに排出量規制法が施行されたため、これに準じたディーゼル・エンジンを開発するには、1台当たりのコストが2000-3000ドル(約21-32万円)余計にかかる。

 もちろんこれは、ハイブリッド車の追加コストよりは安い。ハイブリッド車は3000-5000(約32-54万円)の追加コストがかかるが、米国の交通状況を考えると、この追加コストに見合うだけの省燃費を実現できない。

 とはいえ米国では、欧州のようにガソリン税の高さがディーゼル・エンジンの人気を高めるということもない。米国市場にディーゼル車がデビューしたのは1980年代初頭だが、トラックを除くとその売れ行きは惨憺(さんたん)たるものだった。

 米国の自動車メーカーは、第2次石油危機でアジア勢の小型車に市場を席巻(せっけん)されたことから、ディーゼル車の導入に躍起になった。しかし、設計力不足から、それらのディーゼル車は3万マイル(約4万8000キロ)程度でエンジンが壊れてしまった。

■米国の市場占有率はわずか3.5%

 現在、米国市場の自動車売上にディーゼル車が占める割合はわずか3.5%。欧州市場の約60%とは大きな隔たりがある。

 米市場におけるディーゼル車のシェア拡大を阻む最大の要因について、米民間調査会社グローバル・インサイト(Global Insight)のアナリスト、John Wolkonowicz氏は、排出量規制法がさらに厳しくなるとの懸念が業界内に広がっている事実を指摘する。

 同氏はAFPの取材に対し、次のように語っている。

「ディーゼル車は低速走行時のトルクが非常に高いため、運転していて楽しい。個人的には、ディーゼル車は運転に楽しさを求める米国人にマッチしているし、燃費を考えてもいい選択だ。だが現状では規制法が今後どう改正されるか不透明なため、メーカーはディーゼル車の積極的導入には二の足を踏んでいる」(c)AFP/Mira Oberman