【11月1日 AFP】植物油で走るハマー(Hummer)から水素エンジンで猛スピードを出せる車まで、ガソリンを大量消費する「マッチョ」なイメージを保ちながらも、環境に優しい自動車の開発に、徐々に関心が高まっている。

 米ラスベガス(Las Vegas)で開催中の自動車アクセサリー用品展示会SEMA 2007では、燃料消費や環境への配慮など無縁という自動車やトラックの展示が圧倒的多数を占める。

 しかし、この道徳的倫理を欠いた自動車のオンパレードの中に、ごくわずかだが環境に配慮したものも見られる。その一例が、Galpin Auto Sportsによるフォード(Ford Motor)ピックアップトラックの改造車だ。

 このトラックはバイオディーゼルと水素を使った実験的なエンジンを採用し、排出するのは水蒸気のみ。「環境にとって正しいことをしようと努めている」とBeau Boeckman社長は話す。「環境のために性能を犠牲にする必要はない。この2つは両立させるべきだというのがポイントだ」

 市場に最も普及しているトヨタ自動車(Toyota Motor)のハイブリッド車「プリウス(Prius)」を改造したのはWest Coast Customs (WCC)。人気スポーツ選手やセレブのための改造車を手掛ける同社は、性能を強化した豪華仕様のプリウスを展示した。空気力学を改善し、重量を45キロ軽量化したという。

 同社のCEO、Ryan Friedlinghaus氏は「環境に優しい車は自動車業界に大きな影響を及ぼし始めており、アフターマーケット業界に与える影響も大きい。若い世代はプリウスを見て『運転してみたい』と言っている。今度はわが社のプリウスに若者が目を向けてくれるだろう」と期待を込める。

 これとは別に、実験で時速210キロのスピード記録を達成したというプリウスも展示された。「この車がこれほど高速を出すのを見ると誰もが驚く」とトヨタの担当者は言う。

 トヨタはエンジンをパワーアップした「ハイランダーハイブリッド(Highlander Hybrid)の試作車も出展した。「ハイブリッドでも従来の自動車と同じことができるということを、業界関係者に示したい」と担当者。

 再生可能エネルギーの利用拡大に向けた啓発と研究を行っている非営利組織のEcoTrekは、環境保護派から目の敵にされているハマーをエコ仕様に改造。植物油で動くエンジンを装備し、車内はフェイクレザー張り、ランニングボードにはリサイクル可能なアルミを使った。たくさんの人を乗せるのに環境に優しい車を使いたいという消費者へのアピールを狙う。

 水素エンジンで走行し、時速320キロを出せるフォードの「999」にかかわったリック・ダーリン(Rick Darling)氏は、「燃料電池車でも楽しめる」ということを示したいと話す。

 環境への配慮が米国人の自動車に対する関心を脅かすとの見方もあるが、ダーリン氏は「アメリカ人から自動車を取り上げることはできない。これはわれわれの文化だ」とこうした見方を一蹴した。(c)AFP/Tangi Quemener