【8月1日 AFP】米国のメディア王、ルパート・マードック(Rupert Murdoch)氏(76)率いるメディア大手ニューズ・コーポレーション(News Corp.)が1日、米新聞大手ダウ・ジョーンズ(Dow JonesDJ)の買収に成功した。買収額は50億ドル(約6000億円)以上で、米国を代表する経済紙「ウォールストリート・ジャーナル(Wall Street JournalWSJ)」などが同氏の巨大複合メディアグループ傘下に入ることになり、米メディア界は激変が予想される。

 買収をめぐる両社の交渉は3か月に及んだ。DJの取締役会では、ニューズ側からの買収提案を先に承認していたが、100年間にわたり創業家としてDJを所有し、現在も株主であるバンクロフト家のメンバーの一部や、WSJ紙の記者らが拒絶していた。DJ記者の組合は、買収された場合、マードック氏が商業利益拡大の目的で、WSJ紙の「名声」を利用するだろうと反発していた。

 反対したバンクロフト家のメンバーは、マードック氏の介入によりWSJ紙の編集権の独立性が保たれなくなることを懸念していたが、マードック氏側はこうした懸念に対し、編集監督委員会の設置を提案。5人で構成する同委員会にバンクロフト家からメンバーが参加し、「DJの出版物およびサービスにおける報道的および編集的一貫性と独立性の維持を確保する」ことを、両社の取締役会が承認したとDJ側がウェブサイト上の声明で発表した。

 バンクロフト家一族は売買ができない特殊株を保有しており、DJの議決権の過半数以上の64%を握っているが、うち議決権32%を保有している一族メンバーの支持を、マードック氏が獲得したと報じられていた。また、一般株主がバンクロフト家に対し、売却に応じるよう圧力をかけたとも伝えられた。

 買収完了までには、ニューズ側はさらに米規制当局の承認を受ける必要があるが、マードック氏は何も問題はないだろうとの見方を示している。WSJ側によると、買収手続きは年内にも完了する見通し。

 過去数十年間で一大「メディア帝国」を築いてきたマードック氏は、今年10月15日に新たにニューズ系列のビジネス・ニュース・チャンネル、「フォックス・ビジネス・ネットワーク」を国内のケーブルTV網で開始し、メディア業界におけるさらなる利益追求を計画している。(c)AFP