【6月7日 AFP】サンパウロ(Sao Paulo)で開催中のエタノール・サミット(World Ethanol Summit 2007)の2日目となる5日、ハンガリー生まれの米投資家ジョージ・ソロス(George Soros)氏(76)は、自身をエタノール事業への「投機家」であると言明し、エタノールに対する関税障壁は取り除かれる方向で進むだろうと述べた。サミットには各国の組織代表者のほか、米国、インド、日本から投資家、政治家、科学者、専門家が出席している。

■9億ドルをエタノール事業に投資するソロス氏

 エタノールサミットの主要人物の1人であるソロス氏は通貨投機で富を構築。米経済誌フォーブス(Forbes)によると、同氏の純資産は85億ドル(約1兆円)に上るという。また、サトウキビを原料とする好調なブラジルのエタノール事業への最大の投資家だ。

 同氏は、「ブラジルにおける『投機家』という言葉にはネガティブな意味合いも含まれる事は熟知しているが、わたしはエタノールへの投機家だと認めなければならない」と語る。

 ソロス氏が出資する会社アデコアグロ(Adeco)によると、同氏は過去3年間で合計9億ドル(約1090億円)をブラジル中西部のマットグロッソドスル(Mato Grosso do Sul)州と南東部のミナスジェライス(Minas Gerais)州のエタノール蒸留施設に投資している。

 ブラジルは世界のエタノール生産の35%を占め、米国の37%に次いで2位。米国のエタノールは主にトウモロコシを原料とするもので、連邦政府が補助する。

 政府は、2007年収穫のサトウキビから約200億リットルのエタノールが生産されると見積もる。

■海外市場の開放が課題

 ブラジルでは80%の新車が単体またはガソリン混合のエタノール対応の「フレックスエンジン」を搭載している。

 ソロス氏は、ブラジルはエタノール生産を10倍に拡大できるとした一方で、「エタノール事業への投資を拡大するには、依然解決すべき問題が多々ある」ことを認めた。

 国内のエタノール市場は飽和状態にあり、エタノール産業発展のためには輸出が必要不可欠だが、関税障壁がこれを抑圧しているのが現状。例えば米国はブラジル産エタノールに対し、リットル当たり0.14ドル(約17円)の関税を課しているが、これは生産原価に相当する。

 ソロス氏は、問題は「米国、欧州、日本の市場をどう開放するか」と「安定した相場環境をどう創出するか」だと指摘する。(c)AFP