【12月30日 AFP】前週通過したサイクロンにより記録的な大洪水となっているオーストラリア北東部クイーンズランド(Queensland)州では、30日までに新たに数百人が避難するなど被害が深刻化している。当局は事態が数週間続く可能性もあるとして警戒している。

 サイクロン「ターシャ(Tasha)」は経済的に重要な地域であるブリスベーン(Brisbane)一帯の広範囲に洪水を引き起こした。雨水が下流に流れるにつれ河川は増水し続けている。

 29日までに1000人を超える人が避難していたが、30日には同州内陸部のコンダマイン(Condamine)の全住民約100人が航空機で安全な場所に運ばれた。

 人口1万1000人のエメラルド(Emerald)では、近くの川の水位が記録的レベルに達し、町の80%が水に漬かると予想されている。ロックハンプトン(Rockhampton)では4000の不動産が被害を受ける恐れがあり、バンダバーグ(Bundaberg)では洪水で町が二分された。

 これらの地域に設置された避難所には洪水の拡大に備え数千人が避難しているほか、農村部や鉱山地域では親戚や友人の家に身を寄せている住民も多い。当局では、交通が遮断されている地域へ食糧の空輸も検討している。

■資源大手が「不可抗力」を宣言

 同州で鉱山事業を行っている世界有数の資源大手リオ・ティント(Rio Tinto)、BHPビリトン(BHP Billiton)、アングロ・アメリカン(Anglo American)は多数の石炭関連事業で「不可抗力」を宣言した。また広範囲で綿畑やサトウキビ畑が完全に水没したほか、メロンやトマト、マンゴー、バナナの価格が急騰する可能性がある。

 インフラも深刻な打撃を受けた。線路や道路は冠水し、ロックハンプトンの空港が閉鎖される恐れもある。クイーンズランド州の大半の地域がすでに自然災害地域に指定され、緊急資金援助の対象となっている。

■病気、サメ、ワニ、新たなサイクロン、猛暑にも警戒

 さらに当局は、下水や動物の死がいで汚染された水や、巨大な水溜りで発生する蚊によって病気が発生する危険は高いと警戒を強めている。
 
 また、クイーンズランド州サメ管理プログラムのトニー・ハム(Tony Ham)氏は、現地紙クーリエ・メール(Courier-Mail)に対し、今回の洪水で大きな河川に生息していたサメが流され、人が集まる海水浴スポットやサーフィンスポットに迷い込む可能性があると警告している。同様の警告はワニについても出されている。

 オーストラリアの気象当局は、今回被災したクイーンズランド州とは大陸の反対側にあるウエスタンオーストラリア(Western Australia)州沖の洋上で低気圧がサイクロンに発達しつつあると注意を呼びかけている。一方、サウスオーストラリア(South Australia)州とビクトリア(Victoria)州は猛暑の中新しい年を迎えるとみられ、野生動物への被害が心配されている。(c)AFP/Torsten Blackwood