【3月14日 AFP】オーストラリア・シドニー(Sydney)湾で2006年に発見され豪当局が戦争遺物として保護管理していた旧日本軍の特殊潜水艇の残骸が、何者かによって荒らされ、パーツなどが持ち去られていることが分かった。豪環境省が14日、発表した。

 この小型の潜水艇は第2次世界大戦中の1942年、旧日本軍がシドニー港に停泊中の連合軍艦船を狙った奇襲作戦で使用されたもの。作戦には3隻が投じられ、うち2隻は作戦に失敗し自爆したが、残る1隻は2006年にスキューバダイビング中のダイバーらがシドニー北部沖で発見するまで行方が分からなくなっていた。

 豪当局は見つかった潜水艇の周辺に進入禁止区域を設け、遠距離監視カメラを設置して保護していた。ところが、このほど考古学調査の際に、区域内に侵入した何者かによって潜水艇の船体が傷つけられ、3枚あるスクリューの羽根のうち2枚が盗まれていることが判明したという。

 環境省はまた、潜水艇に残されていた「遺物」も持ち去られていたと発表したが、具体的に何が盗まれたのかは明らかにしなかった。潜水艇の中には乗組員2人の遺体と日本刀、お守りなどの私物が残されているとみられていた。

 豪当局によると、保護されている遺物・遺構を損傷した場合に適用される刑罰は、最高5年の禁固刑。今回、損傷を受けた潜水艇はニューサウスウェールズ(New South Wales)州の歴史的遺産保護法の対象ともなっており、違反者には110万オーストラリアドル(約1億100万円)の罰金が科される。

 環境省では、侵入者に関する情報の提供を求めている。

 旧日本軍のシドニー港奇襲作戦では、乗組員2人ずつを乗せた3隻が投入され、2隻が防潜網をくぐり抜け港の中に侵入したが、連合軍側に発見され迎撃された。うち1隻が連合軍の重巡洋艦「シカゴ(USS Chicago)」を狙って魚雷を発射したものの狙いは外れ、フェリーを改造した豪艦艇「クッタブル(Kuttabul)」の近くに着弾。この爆発で21人が死亡した。(c)AFP