【5月29日 AFP】ジャマイカ政府は、麻薬組織のリーダーだとして米国から身柄の引き渡しを求められているクリストファー・コーク(Christopher Coke)被告(42)の拘束に乗り出したが、同被告は一部の国民から「ロビン・フッド」と称されるほど英雄視されている。

 24日に治安部隊が突入した首都キングストン(Kingston)のスラム街では、コーク被告を熱狂的に支持する人々が、拘束を阻止しようと武器をとって立ち向かった。

 コーク被告は、麻薬取引など儲けの大きい地下活動を管理するネットワークを組織している。ジャマイカには、社会の周縁で、本人たちが「商業上の」と称する莫大かつ違法な利益を手にしている人物はほかにもいるが、同被告はこうした「大物」たちとは異なり、メディアの取材を避け、露出度が極端に少ない。だが、その影響力は疑いようもない。

■スラム街に雇用を創出

 コーク被告は、もともと建設会社を経営していたが、政府と複数の建設契約を結んでいたため儲けは大きかった。やがて、失業者があふれるキングストン西部にミニ経済を創出し、小規模な雇用を生み出した。

 だが、この影響力は、破滅をもたらすことにもなる。

 米国は、1990年代、同被告を国際ギャング組織「シャワー・ギャング(The Shower Posse、敵に銃弾をシャワーのように浴びせる、の意)」のリーダーと断定。前年8月には、ニューヨーク(New York)などでマリファナとクラック・コカインを売却し、密売された武器で仲間を武装させたなどの罪状を明らかにし、ジャマイカ政府に対し、身柄の引き渡しを求めた。

 一方、コーク被告の地元にあたる選挙区から選出されているブルース・ゴールディング(Bruce Golding)首相は、この求めに応じてこなかったが、米政府から「麻薬取引撲滅の取り組みに協力していない」との非難を受け、前週に同被告の拘束に乗り出した。しかし暴力が激化したことから、23日には非常事態を宣言した。

 最近まで同被告の弁護士を勤めていたトム・フィンソン(Tom Tavares Finson)上院議員は、被告は「ビジネスマン」だと主張している。

 コーク被告は、米司法省の「世界で最も危険な麻薬組織のリーダー」のリストに加えられており、有罪が確定すれば終身刑および数百万ドルの罰金が科される見込み。(c)AFP

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