【2月26日 AFP】英公訴局(日本の検察庁に相当)は25日、イングランド(England)とウェールズ(Wales)の検察官に対し、不治の病などに苦しむ家族や知人を安楽死させた容疑者を自殺ほう助の罪に問う場合の新たな指針を配布した。

 キア・スターマー(Keir Starmer)公訴局長官によると、新しい指針は、個別の自殺ほう助事件における立件可否の枠組みを明確にしたもので、被害者側よりも容疑者が安楽死を手助けした動機に重点を置いているという。

 例えば、被害者が明確に死を決意していたり、容疑者が被害者に死を思いとどまるよう説得していた場合、起訴については慎重に検討する。被害者が18歳未満の場合や、容疑者による被害者への暴行や虐待歴が認められた場合は起訴を支持する、などとなっている。

 その一方で、スターマー長官は、「自殺ほう助が違法であることに変わりはなく、指針は安楽死容認を目指すものではない」と強調した。

 英国では、前週に英国放送協会(BBC)の司会者だったレイ・ゴスリング(Ray Gosling)氏がエイズを患っていた恋人の男性を窒息死させた過去を告白し、逮捕後に保釈された。さらに、最近では母親が重病の子どもを殺害する事件が2件あり、このうちの1人は禁固刑を受けた。

 イングランド、ウェールズの法律では自殺ほう助は犯罪であり、最大で14年の禁固刑が科せられる。

 だが近年になって、不治の病や病気の末期症状に苦しむ英国人100人あまりが、安楽死が合法化されているスイスの医療機関を訪れ、自ら死を選ぶ例が増えている。最近では安楽死を望む多発性硬化症患者の女性が、夫が安楽死をほう助した場合に訴追しないよう求める訴訟を起こしており、こうした流れが新指針の発表につながったという。(c)AFP