【7月15日 AFP】今月ユネスコ(UNESCO)世界遺産に登録されたカンボジアのタイ国境にある「プレアビヒア寺院(Preah Vihear Temple)」の領有権問題が両国で蒸し返される中、同寺院周辺で15日、約40人のタイ軍部隊が越境しカンボジア側に侵入したと、カンボジア当局が発表した。

 同日、プレアビヒア寺院がカンボジアの世界遺産として登録されたことに抗議したタイ人3人が、国境の検問所を飛び越えて寺院へ行こうとし拘束された。この事件の数時間後、タイ軍がカンボジア側に侵入したという。

 同寺院を管轄するカンボジアの当局者によると、タイ軍部隊は山頂にあるプレアビヒア寺院には至らず、山腹の仏塔で停止した。ここで、タイ軍とカンボジアの入管当局が協議した。銃撃などはなく、今後の深刻な展開を避けるための話し合いだったという。

 しかし、寺院のタイ側の県のSeni Chittakasem知事は、「誤解だ。われわれの部隊による国境侵犯はなかった」と、タイ軍が越境したこと否定した。

 Seni知事は拘束された3人のタイ人の解放を求めるために代表を派遣していたと述べ、その際、タイ軍は国境近くにはいたが、タイ領内にとどまっていたと強調した。また拘束された3人は全員釈放され、現在はタイ領内に帰還しているという。

 プレアビヒア寺院は建立約900年のヒンズー教寺院。カンボジアとタイが長年、寺院一帯の領有権を争っていたが、1962年に国際司法裁判所がカンボジア領との判断を下した。しかし、寺院の入口に入るにはタイ側の山のふもとから上るしかないなど問題があったことから、カンボジアの世界遺産登録の単独申請にタイ政府は同意していなかった。(c)AFP