【6月30日 AFP】1970年代にカンボジアで大虐殺を行ったポル・ポト(Pol Pot)政権の元幹部を裁くカンボジア特別法廷(Extraordinary Chambers in the Courts of CambodiaECCC)で、副首相兼外相を務めたイエン・サリ(Ieng Sary)被告(82)の保釈請求に関する初審理が開かれた。

 戦争犯罪および人道に対する罪が問われているイエン・サリ被告はやつれた様子で、杖を使用し警備の助けを借りながら法廷に入り着席した。審理中はほとんど言葉を発さず、判事団が職業を尋ねると短く「引退している」と答えた。

 5人から成る判事団に対して被告弁護人は、被告は健康状態が悪いため、今後始まる特別法廷に耐えうる状態を維持するためにも拘束を解き、自宅監禁に切り替えられるべきだと訴えた。カンボジア特別法廷は1年以内の開始が見込まれている。

 イエン・サリ被告は拘束後、心臓疾患のために数度にわたり入院してきた。

 米国から加わっている弁護人の1人、Michael Karnavas弁護士は、被告の健康状態が悪化すれば裁判過程全体が危うくなりうると主張した。同様の主張は、ポル・ポト政権の元幹部らが高齢化し、健康に問題をきたして裁判自体に耐えられなくなることを懸念する特別法廷の支持者側からも聞かれている。

 一方、検事団のYet Chakriya検事は同日、被告弁護団はイエン・サリ被告に対する公判手続きを遅らせているだけだと非難した。

 30日の法廷には約300人の市民が詰めかけた。南西部のカンポート(Kampot)州から来た男性(57)は、イエン・サリ被告の拘束が解かれないことを願うと述べた。

 週内の審理中に弁護側は、イエン・サリ被告は1996年に、政府軍への投降と引き換えに国王による恩赦を受けているため、特別法廷への訴追は取り下げられるべきだと主張する見込みだ。

 過去に出された恩赦と国際法廷の権限の折り合いをいかに付けるかは、カンボジア法と国際法の組み合わせで運営されているカンボジア特別法廷の判事団が直面する困難な問題のひとつだ。(c)AFP/Suy Se