【2月28日 AFP】1989年に米国アラスカ(Alaska)沖で同国史上最悪の原油流出事故を起こした石油大手エクソンモービル(ExxonMobil)への賠償金をめぐる裁判で、エクソンモービルは米最高裁に対し27日、事故の責任は当時のタンカー船長にあるとして同社に賠償金25億ドル(約2700億円)を求める申し立てを却下するよう主張した。

 事件以来20年にわたり争われてきた「エクソン・バルデス(Exxon Valdez)」号原油流出事故の法廷で、米判事たちの見解はこれまで二分されている。

 裁判の争点のひとつに、当番中に甲板を離れていたジョセフ・ヘイゼルウッド(Joseph Hazelwood)船長(当時)の行為に関し、海事法を根拠としてエクソンに懲罰を科すことができるかどうかがある。

 検察側は、バルデス号が座礁した際、ヘイゼルウッド船長は酔っていたと主張したが船長は否定、刑事訴訟では無罪となった。

 エクソンの弁護人を務めるウォルター・デリンジャー(Walter Dellinger)氏は公判で、「船長が規定に違反して甲板を離れたというだけで」、エクソンモービルに賠償金が求められるべきではないと主張した。しかし、原告側の弁護人ジェフリー・フィッシャー(Jeffrey Fisher)氏は、同社には従業員の行為に関する責任があると反論した。

 エクソン・バルデス号原油流出事故は1989年3月24日、米アラスカ州プリンス・ウィリアム湾(Prince William Sound)で同号が座礁、原油1100万ガロンが流出し、周辺水域が汚染されたもの。沿岸部全長500キロに被害が及び、鳥数万羽、ラッコ数百頭が死ぬなど、米国史上最悪の原油流出事故となった。エクソン・モービルは事故後、約21億ドル(約2200億円)をかけて汚染除去を行い、漁民や地元住民に3億ドル(約320億円)の補償金を支払った。(c)AFP