【6月24日 AFP】ジャック・シラク(Jacques Chirac)前仏大統領(74)が、大統領就任前に関わったとされる公金横領疑惑で仏司法当局に事情聴取される可能性がでてきた。

 12年間仏大統領を務めたシラク氏の不訴追特権は退任1か月後の6月16日に消滅している。

 シラク前大統領は声明の中で、「弁護士を通じ予審判事の聴取に応じる用意はあると連絡した」と述べ、要請があれば応じる姿勢を明らかにした。

■パリ市長時代の不正疑惑

 大衆紙パリジャン(Le Parisien)はシラク氏がすでに秘密裏に出頭要請を受けたと報じている。問題の疑惑は、シラク氏がパリ市長を務めていた当時、パリ市役所の職員のポストが不当に水増しされ、その給与がシラク氏が総裁を務める政党・共和国連合(RPR)に流れたとされるもの。

 同紙によると、担当予審判事は、前大統領の出頭要請は特に慎重さを要するという理由で、予定される聴取の時間と場所は明かさなかったというが、事情聴取は容疑者としてのものではなく、「協力的な証人」としてのものになると説明しているという。

 予審判事は、疑惑に関連するとされる、1993年のシラク氏の署名入りの書類を入手している。

■クリアストリーム疑惑

 一方、二コラ・サルコジ(Nicolas Sarkozy)現大統領が内相だった当時、その失脚を図る陰謀があったとされるいわゆるクリアストリーム疑惑について、シラク氏は22日、同じ声明のなかで「大統領在任中に、その地位に基づき行った行為の責任は問われない」との憲法条文を根拠に事情聴取を拒否する考えを明らかにした。すでに司法当局への書簡で事情聴取に応じないことを伝えたという。

 シラク前大統領は任期満了に伴い5月16日に退任したが、大統領選の与党公認候補には、サルコジ氏のライバルのドミニク・ドビルパン(Dominique de Villepin)前首相を望んでいたとされる。

 クリアストリーム疑惑とは、台湾への軍艦売却の際に、サルコジ氏を含む当時の著名な政治家が不正な手数料を受け取ったことを示す銀行文書がねつ造されたというもの。サルコジ氏は結果的には大統領に選出されたものの、自分が卑劣な陰謀の犠牲者だったと主張している。

 しかし仏ラジオ局のヨーロッパ1(Europe 1)は、予審判事はクリアストリーム疑惑に関連してシラク氏の事情聴取を7月にも行う計画を持っていたと伝えた。

 仏週刊誌カナール・アンシェネ(Le Canard Enchaine)によると、予審判事は、シラク大統領がこの件でサルコジ氏を調査するよう求めたことを示すとされる情報機関高官のメモについて、前大統領から事情を聴取したい意向とされる。

 シラク前大統領は声明の中でサルコジ氏の調査を行う指示は出していないと、強く否定した。(c)AFP