【8月1日 AFP】スペイン北西部ガリシア(Galicia)自治州サンティアゴ・デ・コンポステーラ(Santiago de Compostela)市近郊で24日に発生し、79人が死亡した列車脱線事故で、事故列車の運転士が事故直前に電話で話していた相手は同じ列車に乗務していた車掌だったと供述していることが分かった。事故を調べている現地の裁判所が31日、明らかにした。

 裁判所の発表によると、79件の過失致死の疑いで刑事訴追された運転士のフランシスコ・ホセ・ガルソン・アモ(Francisco Jose Garzon Amo)容疑者は同日、先月28日に続いて裁判所で行われた2度目の事情聴取で、「列車が脱線した瞬間は通話中ではなかったが、電話を切ったのは脱線の数秒前だった」と述べた。

 同容疑者は保釈されているが、車掌との電話について証言するため自ら希望して事情聴取を受けた。

■なぜ減速しなかったか「自分でもまだ分からない」

 28日に非公開で行われた1回目の事情聴取は録音され、その一部の抜粋を日刊紙エル・パイス(El Pais)がインターネット上に公開した。これによると、なぜ急カーブに差し掛かる前に減速しなかったのかという予審判事の質問に対してガルソン容疑者は、「説明ができない。自分でもまだ分からない」と話していた。

 また、改めて事故の原因を問われた容疑者は、「真摯(しんし)にお答えしますが分からないのです。そうでなければブレーキを掛けないなどという正気とは思えない行動は取らなかったはずです」と述べた。

 鉄道関係者によると、事故現場付近の線路には一部の高速鉄道路線では導入済みの自動ブレーキシステムが導入されていないため、運転士がブレーキをかけなければならないという。

■事故直前にブレーキ操作

 容疑者は予審判事に、自分はブレーキをかけたもののその時にはすでに脱線が「避けられなくなっていた」と供述した。「列車が転覆する前にできるかぎり全ての操作をしたが、効果がなかった」という。

 また、エル・パイス紙は事故列車に乗務していたのはアントニオ・マルティン・マルガン(Antonio Martin Marugan)車掌だったと特定し、その発言を紹介した。ガルソン容疑者とは良い友人同士だと話しているというマルティン氏は、目的地までの停車駅でどのプラットホームを使うか業務用の電話でガルソン容疑者に連絡していたと話しているという。

 79人が死亡、178人が負傷した今回の事故は、1944年以降にスペイン国内で起きたものとしては最悪の鉄道事故となった。(c)AFP/Roland LLOYD PARRY