【12月6日 AFP】「実際に経験していない人の批判は受けない」──米紙ニューヨーク・ポスト(New York Post)に掲載され問題となっている、男性が電車にはねられる寸前の写真を撮影したカメラマンが5日、メディアを通じて反論した。

 ニューヨーク・ポスト紙が4日、「間もなく死ぬ運命の人」との大見出しを付けて問題の写真を一面ぶち抜きで掲載したことが発端となり、落下した男性の命を救おうと急ぐのではなく、「その瞬間」の写真を撮影し続けたカメラマンの倫理観に疑問を投げかける声が全米から上がった。

 しかし写真を撮影したR. ウマル・アバシ(R. Umar Abbasi)氏は、被害者が線路に落ちた場所から100メートル以上離れたところにいたため、助けることは不可能だったと訴えている。

 同氏はNBCテレビの取材に対し、「もし同じ状況でまた同じことが起きて、被害者が落下した場所に走ったとしても、私には彼を助けることはできないだろう。カメラが手元に有ろうと無かろうと同じだ」と語った。さらに「自分よりももっと近くにいた人たちが、誰も彼を助けようとしなかった。私はそのことに、心から驚いている」と付け加えた。

 アバシ氏によると、「人がホームに落ちるところ」を見てから列車が被害者をはねるまでの時間は、22秒程度だったという。「22秒は長い時間ともいえます。ただ落下した地点へと向け走っていた際、彼を突き落とした男が私の方に向かってきたため、私は壁に背中をぴったりと着けて、少しの間やり過ごしたのです」と説明した。この直後、被害者の男性は、ホームによじ登ろうとしていたが上り切ることができず、列車にはねられている。

 フリーのカメラマンであるアバシ氏は、事故の写真をポスト紙に売ったことは認めている。しかし、カメラのフラッシュをたいたのは地下鉄の運転士に緊急事態を警告するためだったと主張した。

 また自分への批判が集まっていることについては、「フェアではない」として一蹴。「話を見聞きしただけの人たちの批判は気にしない。現場にいなかったのなら、事故がどれほど短い時間に起きたのか彼らには分からない」と述べた。(c)AFP/Brigitte Dusseau