【8月14日 AFP】イギリス海峡(English Channel)で7月末、アルジェリアに向けて航行していた貨物船が消息を絶ち、行方が分からなくなっている。この貨物船をめぐって、さまざまな憶測が飛び交う事態となっている。

 行方不明となっている貨物船は、フィンランド企業がチャーターしたマルタ船籍のArctic Seaで、ロシア人船員15人が乗船していた。前月28日に、イギリス海峡上でレーダーから姿を消した。

 ドミトリー・メドベージェフ(Dmitry Medvedev)露大統領命により、ロシア艦隊が大西洋(Atlantic Ocean)上で捜索にあたっているが、消息は分かっていない。

 これまでのところ、海賊による襲撃、マフィア間の抗争、商売上の争いに巻き込まれたなどの見方がでている。

 欧州委員会(European Commission)の広報担当マーティン・セルマイヤ(Martin Selmayr)氏は14日、Arctic Seaとの交信記録などから、貨物船は消息を絶つ前に、少なくとも2回、襲撃にあっていた可能性を示唆した。1度目の襲撃はスウェーデン沖、2度目はポルトガル沖で発生したという。

 セルマイヤ氏は、これらの襲撃には海賊や武装集団による強奪との共通点が見られないと付け加えたが、その根拠などは示さなかった。

 また、セルマイヤ氏は、欧州連合(EU)も事態を重視しており、現在、加盟国の間で対策を協議中であると明かした。

 一方、スウェーデン警察によると、バルト海(Baltic Sea)で前月24日、麻薬捜査官を名乗る覆面集団がArctic Seaに乗り込み、乗組員を縛り上げ、船内を物色するという事件があった。集団は12時間後、何もとらずに去ったという。

 しかし、海事専門家らは、Arctic Seaがイギリス海峡を通過した際も、この集団に乗っ取られたままだった可能性もあるとみている。

 これが海賊による襲撃であれば、欧州海域における、初の海賊事件となる。

 ロシアのメディアは13日、フィンランド人のブログに、スペイン北部のサンセバスチャン(San Sebastian)に入港するArctic Seaと、全長がほぼ同じ船舶を目撃したとの書き込みを報じている。(c)AFP