【8月15日 AFP】新潟県中越沖地震で被災した東京電力の柏崎刈羽原子力発電所の視察を終えた国際原子力機関(International Atomic Energy AgencyIAEA)の調査団は14日、ウィーンの同本部で「同原発による健康や環境への脅威はない」と報告した。これについて日本は15日、歓迎の姿勢を示している。

■損傷は予想を下回ったと発表

 計6人からなるIAEA調査団は前週、世界最大級の原発で、7月16日の中越沖地震後に少量の放射能漏れが確認された同原発を現地調査した。調査の結果として「原発は安全に停止し、損傷は予想を下回ったもようだ」と発表した。

 モハメド・エルバラダイ(Mohamed El Baradei)IAEA事務局長は「地震による損傷は、原子炉や原子炉の安全システムに影響のない施設内の区域に限定されていたようだ」と声明で述べた。

 日本政府は国内外の懸念を払しょくするため、IAEAによる調査で安全が裏付けられることに期待を寄せていた。

 原子力産業の管轄省庁である経済産業省はIAEA報告書を受け、「放射能漏れについて、環境には影響がないという日本の発表が支持された」とする甘利明(Akira Amari)経済産業相の歓迎談話を発表した。

 地震大国であるにもかかわらず、天然資源にほとんど恵まれない日本は電力供給の3分の1近くを原子力発電に依存している。

 死者11人を出した中越沖地震後、柏崎刈羽原発の施設では火災が発生し、放射能漏れが確認された。今回、IAEAは漏えいした放射能の量について「住民の健康や環境に影響を及ぼす基準をかなり下回るごく少量だった」と報告した。東京電力でも、放射能漏れの量は極めて少なく外部への影響はないとしていたが、当初実際よりも少ない量を報告したことから批判にさらされていた。

■長期的に支障の恐れ

 一方で、調査団は設計者が中越沖地震のマグニチュード6.8規模の大型地震を想定していなかった点を指摘した。東京電力も政府も、同原発のある地域で今回のような強度の地震の発生を予測していなかったことを認めている。

 また調査団は「今回の地震が与えた物理的ひずみが、原発の一部構成部品の長期的な安全運転に支障を与える恐れがある」と警告した。調査団長のフィリップ・ジャメ(Philippe Jamet)IAEA原子力施設安全部長は東京で会見し、同原発をさらに数か月閉鎖し、追加的調査が必要だと勧告した。(c)AFP