【2月21日 東方新報】中国で春節(旧正月、Lunar New Year、2023年は1月22日)連休中にテレビで放送されたある演目がヒットしている。

 中国の地方TV局「河南広播電視台(HBC)」が1月23日に放送した「2023年中国雑技特番」で、天津雑技団の王磊(Wang Lei)さん、何然(He Ran)さん、王松(Wang Song)さんの俳優3人が演じた「3人の和尚」がネット上で評判になったのだ。

「3人の和尚」はコミカルなジャグリングの舞台として演出された。和尚に扮した3人はかけあいを演じ、音楽に合わせて、大きな陶器の壺を何個も放り投げ、ポンポンと頭や肩などで受け止め、再び放り投げるのだ。

 中国のSNS上には「雑技がこんなに面白いなんて思わなかった」「面白くて涙が出てきた」「子どものころを思い出した」などと絶賛のコメントがあふれた。

 天津雑技団は1950年代に創設された歴史ある雑技団として知られ、団員は現在230人で40の演目を持つ。「3人の和尚」は人気演目だ。

 曲芸や奇術などの芸能を指す雑技は、中国で2000年以上の歴史を誇る。雑技団の俳優たちは幼いころから厳しいトレーニングを積むことも知られており、雑技の世界には「1日練習しなければ本人が知り、2日で先生に知られ、3日で観客にも知られる」とのことわざがあるほどだ。

 王磊さんら3人はチャーリー・チャップリン(Charlie Chaplin)やMr.ビーン(Mr. Bean)など有名なコメディアンの動きを長年研究し、北京のオペラといわれる「京劇」俳優から演技指導を受けて演目にストーリー性を持たせたという。

 もともと「3人の和尚」とは、中国に古くから伝わる物語である。「1人の和尚は水桶をてんびん棒で運んで水を飲む。2人の和尚は、桶を2人で持ち上げて運び水を飲む。和尚が3人になると言い争って水を飲めなくなる」という話だ。携わる人数が増えると、役割分担や責任の所在が不明確になって物事がうまく運ばないという意味で使われることが多い。

 雑技の舞台でも、水桶を担いだ和尚が水を飲んだり、言い争ったりして観客を笑わせる。最後にはお寺から突如、煙が上がり、火事になるアクシデントが発生する。もともとの物語通りなら3人の和尚は言い争って消火どころではないはずだが、演目では結末がアレンジされていた。3人の和尚は力を合わせて火事を消し止めるのだ。本来の物語を知っている観客たちから拍手喝采がわき起こり、舞台の幕が下りるのである。

 中国では、ゼロコロナ政策が緩和されて春節が明け、日常が戻ってきた。だが、そのままコロナ前に戻れるという保障はなく、さまざまな火種がくすぶっている。雑技の「3人の和尚」のように協力して火事を消し止められるか。現実も佳境なのである。(c)東方新報/AFPBB News