【1月16日 東方新報】近年、中国ゲーム業界の世界進出がめざましい。

 米調査会社センサータワー(SensorTower)によると、2022年11月の世界モバイルゲームパブリッシャー売上高ランキング上位100社のうち、中国からは43社がランクイン。43社の売上高は総額20億7000万ドル(約2675億2680万円)に達した。中国勢のトップ3は、騰訊控股(テンセント、Tencent)傘下のゲーム開発会社、騰訊遊戯(テンセントゲームズ)と上海米哈遊網絡科技(miHoYo)、網易(NetEase)だった。

 中国のゲーム産業は2010年代から急成長を遂げたが、「中国発中国止まり」のゲームが多かった。騰訊遊戯が2015年にリリースしたバトルゲーム「王者栄耀(Honor of Kings)」は、2021年までに100億ドル(1兆2924億円)の収入を上げるメガヒットとなり収益ランキングで世界一にも輝いたが、国内ユーザーが今も95%以上を占める。

 中国勢が本格的に世界進出を果たしたのが、米哈遊が2020年にリリースしたオープンワールド型アクションRPG「原神」だ。大きな瞳の女性キャラや巨大ロボットなど、日本のアニメ・ゲームの要素を取り入れ、日本、米国、韓国などで大人気となった。センサータワーによると世界累計売上高は40億ドル(約5169億円)を超えた。このうち中国国内の売上高は34.6%の約14億ドル(約1809億円)で、海外の売り上げが上回った。

「原神」は、米国で毎年行われているゲームの祭典「The Game Awards」で2021年はベストモバイルゲーム賞、2022年はユーザー投票で選ばれるプレイヤーズボイス賞を獲得。日本と米国が独占している世界のゲーム業界に食い込み、中国勢初の世界的ヒット作となった。

 2021年には、網易が発売したアクションアドベンチャーバトルロイヤルゲーム「永劫無間(Naraka: Bladepoint)」がブレイク。中国の剣戟(けんげき)ワールドを濃厚に打ち出して発売3か月後には世界販売本数が600万本を突破し、中国のPCゲームで最も売れたゲームの一つとなった。

 2022年11月には、騰訊遊戯がシューティングRPG「勝利の女神:NIKKE(Goddess of Victory: Nikke)」を発売。1か月で売上1億ドル(約129億円)を達成し、収益の半分以上を日本市場が占めている。

 中国のオンラインゲーム市場は世界一の規模となっており、国内で蓄えた資金とノウハウをもとに海外進出を続けている。

 ただ、中国のゲーム業界関係者は「中国は本質的には日本や米国に追いついていない」と指摘する。膨大な時間・人・資金を注ぎ込む「AAAタイトル」と言われるゲームの開発では、日米とまだまだ大きな差があるのが現状という。

 また、中国ゲーム業界は、海外に「打って出ざるを得ない」事情もある。中国でオンラインゲームの販売承認権限を持つ国家新聞出版署は2021年8月、「18歳未満の子どもがオンラインゲームをするのは週末と祝日の午後8~9時のみとする」という「ゲーム制限令」を発表。ゲームに課金する上限も定めた。子どものゲーム依存症対策とゲーム業界の規制を目的としており、一時は新たなゲームのライセンス発行も停止していた。

 さらに中国では少子化が深刻となっており、総人口の減少も始まりつつある。こうした事情から、中国ゲーム業界は今後も「背水の陣」で海外進出を続けていくことになりそうだ。(c)東方新報/AFPBB News