【5月26日 東方新報】歴史的文化財を展示する博物館というと日本では高齢者や愛好家が訪れるイメージがあるが、中国では若者の来場者が増えている。国際博物館会議(International Council of Museums)が定める「国際博物館の日」の5月18日、北京市の故宮博物院(The Palace Museum)や陝西省(Shaanxi)西安市(Xi’an)の始皇帝兵馬俑博物館(Terracotta Warriors Museum)、甘粛省(Gansu)敦煌市(Dunhuang)の敦煌市博物館(Dunhuang Museum)、3000年前の黄金仮面が見つかった四川省(Sichuan)広漢市(Guanghan)の三星堆博物館など、全国各地の施設に多くの市民が訪れた。

 中国では博物館の新設ラッシュが続き、2021年だけで新たに395館が誕生。全国の博物館は6183館に上り、90%の施設が無料で入場できる。

 2020年にコロナ禍が始まり市民の外出が制限された当時、全国各地の博物館は来場者が激減するピンチを迎えた。そこで各施設が始めたのが「クラウド展示」だ。収蔵する文化財をデジタルデータでインターネット上に公開すると、「時間や距離の制約を超えていろいろな博物館を旅している気分」「画像を拡大すれば、博物館に行くよりアップで見られる」と評判に。ステイホームを余儀なくされていた市民の精神的な憩いの空間となった。また、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)技術を導入し、来場者が没入型の体験をできるエンタメ要素を取り入れる博物館も増えた。

 物心が付いた時から豊かな生活を送っている中国の若者の間では、伝統文化を取り入れた中国製品を欧米ブランドより好む「国潮(中華風トレンド)」が広まっている。その流れで、自国の長い歴史文化を感じる博物館も人気スポットとなっている。

 また、中国政府は昨年7月、過剰な受験戦争を緩和するため学校の宿題と塾通いの負担をそれぞれ減らす「双減政策」を実施。浮いた時間を家族とのコミュニケーションや芸術活動に充てることを奨励している。学校の授業の一環や休日の家族の外出先として博物館巡りが増えており、中国の博物館熱は今後も続きそうだ。(c)東方新報/AFPBB News