【8月8日 東方新報】中国では「抖音(Douyin)」「快手(Kuaishou)」などショート動画投稿プラットフォームが花盛りで、昨年12月末でユーザー数は9億3400万人に上る。最近は科学や自然にまつわる知識を分かりやすく1分程度で紹介する「科普博主(科学普及ブロガー)」が増え、人気となっている。

 昨年11月、上海市の同済大学(Tongji University)で物理学の教授を長年勤めていた72歳の女性、呉於人(Wu Yuren)さんが始めた実験動画コーナー「不刷題」が抖音や快手でバズり、一躍「科学おばあちゃん」として注目された。鍋やほうき、風船といった日用品を使い、ユーモアを交えて1分ちょっとで物理の実験を披露している。「複雑な理論や面倒な計算にとらわれず、子どもたちに物理の魅力を伝えたい」と呉さん。子どもに限らず大人も楽しみ、フォロワー数はすぐに100万人を超えた。

 科学雑誌の編集者、張辰亮(Zhang Chenliang)さんの「亮くんの限りなき科学普及の日常」も人気を博している。珍しい花や鳥、魚、昆虫、猛獣の生態や見分け方などを紹介。ユーザーのコメントが画面に流れる「弾幕」も取り入れ、ワイワイ楽しみながら知識が得られる。

 このほか、「魚が産まれてから人々の食卓に上るまでの期間は?」「有名な絵画『モナリザ(Mona Lisa)』にまつげがない理由は?」「蚊はどんな人を好むか?」といった、肩が凝らず好奇心をくすぐるコーナーが次々と誕生している。「子どもの頃に読んだマンガの内容はずっと覚えているのに、昨日習った勉強は忘れてしまう」という経験から、マンガやアニメを使って科学の魅力を伝える番組もある。海外では「ティックトック(TikTok)」として有名な抖音をはじめショート動画はダンスやエンタメに関する投稿が主流だったが、娯楽だけでなく知識も楽しめる時代となった。

 ただ、ブームが起きると「負の要素」も生まれる。最近は医師がショートビデオで「薄毛を解消する」「体調が良くなる」と言って特定のサプリや医薬品を宣伝し、ユーザーから「効果がなかった」と批判の声が上がった。専門家が肩書きと知識を基にしてビジネスに力を入れるようになると、「科学の普及でなく商売の普及だ」という批判が今後起きる可能性もある。(c)東方新報/AFPBB News