【06月10日 KOREA WAVE】
統一地方選の投票用紙不足に反発した市民ら(c)news1
統一地方選の投票用紙不足に反発した市民ら(c)news1

韓国の統一地方選挙で発生した投票用紙の不足問題を巡り、ソウル市松坡区の蚕室開票所(オリンピック公園ハンドボール競技場)周辺で続く抗議デモは8日、参加者同士による過激な「思想確認」や、無関係の市民に対する強圧的な身元特定・所持品検査へと発展し、現場の治安悪化と混乱が一段と深刻化している。

デモの初期段階では、政治色を抑えた「再選挙」の要求がスローガンの中心だったが、現在は極右系勢力やユーチューバーらによる「不正選挙」の主張が主流派を占める。これに伴い現場では、「再選挙の身を叫ぶ参加者は左派の潜入者(スパイ)だ」との流言が拡散。米国の大統領選で不正選挙を主張する一派が用いた「Stop the Steal(盗みを止めろ)」と書かれた帽子をかぶった男性が、別の女性参加者に対し、親北朝鮮系の左派市民団体「大韓民国大学生進歩連合(大進連)」の所属ではないかと疑い、「キム・ジョンウン(金正恩)を罵倒してみろ」と思想確認を迫る異様な光景も見られた。

現場で仲裁に入った会社員(27)は「再選挙だけを訴える若者に対し、『お前は大進連か』と集団で取り囲んで威圧するため、数時間に1回は小競り合いが起きている」と実態を明かした。

こうした過激な「敵味方」の選別は、デモとは無関係の第三者にも牙を向いている。同日午前には、取材に訪れた台湾出身の外国メディア記者が「中国人(大陸の共産党スパイ)」扱いを受けて包囲されたほか、同競技場内にある大韓ハンドボール協会へ公式球を回収しに来た女子ユース(U20)韓国代表の選手らがデモ隊に呼び止められる事態が発生した。

今月22日に世界選手権への出国を控えている選手らは、国際大会指定の公式公認球(市販されていない特注品)を取りに競技場へ立ち寄っただけだったが、興奮したデモ隊から「スパイだ」「何を持ち出そうとしているのか」と詰め寄られた。選手らは拒否したものの、最終的にカバンの中身を地面に広げて見せるよう強要され、精神的な恐怖を味わったという。

ハンドボール協会側は「大会を前に公式球での練習が不可欠だったため、立ち寄らざるを得なかった」と遺憾の意を示している。現在、同競技場内に事務所を構える複数の競技団体の職員らは出勤できず、在宅勤務への切り替えを余儀なくされるなど、スポーツ界への実害も広がっている。

ソウル市のリアルタイム都市データによると、8日午後3時時点のオリンピック公園内の滞留人口は約9500〜1万人と推計され、年齢別では60代以上が25.7%で最多を占めており、デモの主導権が初期の20〜30代の若年層から、保守系の高齢層へと急速に移行している実態が裏付けられている。

(c)news1/KOREA WAVE/AFPBB News