雲南省の1粒のコーヒー豆が示す農村振興モデル
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【5月15日 東方新報】雲南省(Yunnan)普洱市(Pu’er)思茅区白沙坡村は、かつて「金の豆を抱えながら貧しい暮らしをしていた」村だった。21世帯84人が暮らし、約1080ムー(約72ヘクタール)のコーヒー農園を有するが、長い間、「中国コーヒーの都」の中心地にありながら、産業チェーンの最下流で原料を供給するだけの存在にとどまっていた。
畑で収穫されたコーヒーチェリーの買い取り価格は数元にすぎない一方、都市部のカフェではハンドドリップコーヒー1杯が30~40元(約691〜921円)で売られる。農家と市場の間には大きな価値の隔たりがあり、コーヒーを栽培する人が自分たちのコーヒーを飲めず、産地が産業発展の恩恵を十分に受けられないという課題があった。
しかし、上海・雲南協力によるスターバックス(Starbucks)の「共有価値・美麗星村」モデル事業が始まったことで、この状況は変わりつつある。4月26日、東方新報(Toho Shinpo)の記者は「七彩雲南・海外メディア推薦」活動に同行し、「美麗星村・有風咖谷」を訪れた。そこでは、コーヒーを支点に、農村振興を軸とした「種から一杯のコーヒーまで」の産業チェーン再構築が進んでいた。
◾️より多くの収益を農村に残す
農村振興の鍵は産業振興にあり、その核心は、農民が産業チェーンの中でより多くの収益を得られるようにすることだ。「美麗星村・有風咖谷」は、その答えとして産業チェーン全体を村の中に取り込んだ。
上海市による雲南支援資金、企業や公益団体からの寄付金、普洱市の関連資金などを活用し、1700平方メートルのコーヒー文化体験センターを建設した。ここでは、畑でのコーヒーチェリーの収穫から、天日乾燥、脱殻、選別、焙煎、粉砕、カッピング、ハンドドリップでの試飲まで、観光客が「種から一杯のコーヒーまで」の全工程を体験できる。
産業チェーンの延伸は、価値の再分配をもたらした。かつて村民の仕事は、コーヒーチェリーを買い取り業者に売るところで終わっていた。今では、コーヒーガイド、民宿の経営者、無形文化遺産の手仕事工房の運営者などとして働けるようになり、「家の近くで働く」暮らしが実現している。
◾️「振興させられる」から「自ら振興する」へ
農村振興では、村民の意欲を引き出すことが欠かせない。これまで一部の農村事業では、「政府が動き、住民は見ているだけ」という課題があったが、「美麗星村」ではこの問題が解消されつつある。
同事業は、「社会の力+村集団+専門合作社+農家」という利益連結モデルを採用し、村民それぞれの条件や得意分野に合わせて、「一世帯一業態」の発展ルートを作った。民宿を営む農家、農家レストランを開く農家、ろうけつ染め体験を担当する農家、窯焼きベーカリーを手がける農家など、役割は多様だ。
村集団や村民は単なる働き手ではなく、出資者であり受益者でもある。「共に話し合い、共に建設し、共に享受する」仕組みによって、村民は受け身の傍観者から主体的な参加者へと変わった。さらに外部の専門人材も村に受け入れ、「ベテランのコーヒー農家が技術を伝え、若者が市場を切り開く」という好循環も生まれている。
◾️農村の価値を多方面から引き出す
「美麗星村」では、コーヒーは単なる農産物ではなく、文化を伝える媒体であり、観光コンテンツでもある。コーヒーを軸に、絶版木版画、ワ族の織物、伝統陶芸、手作りのろうけつ染め、窯焼きベーカリー、農場での収穫体験、乗馬、シェアキッチンなど、多彩な体験型コンテンツが広がっている。「左手にコーヒー、右手に茶」という独自の位置づけは、普洱を代表する2つの名物を一つに結びつけた。
こうした産業融合型の発展モデルは、「コーヒー産業で人を引きつけ、深い体験で人を留め、文化の魅力で心を動かす」という好循環を生み出している。事業開始から1年足らずで延べ35万人以上の観光客を受け入れ、民宿は予約が取りにくい状況が続いている。中国ショートドラマ『私の帰り道には風がある2』のロケ地になったことも、多くの観光客を呼び込むきっかけとなった。
また、「美麗星村」は大規模な取り壊しや建て替えではなく、「村そのものがプロジェクトであり、プロジェクトそのものが村である」という考え方を貫いた。もともとの村の姿を残しながら、青い瓦と白い壁を生かして全体を整備し、郷愁と現代化が調和する空間をつくった。農村らしさを残したことが、都市部の観光客を引きつける大きな魅力になっている。
より大きな視点で見ると、「美麗星村・有風咖谷」は、社会の力が農村振興に深く関わるための有効な道筋を示している。政府によるインフラ整備と政策面の保障、企業の市場感覚と運営力、社会団体の公益資源、村集団と農家の土地や労働力が結びつき、それぞれの強みを発揮することで、持続可能な農村振興の仕組みが築かれている。
1粒のコーヒー豆が、村の運命を変える力を生み出した。普洱市思茅区の山水の中で、「美麗星村」は一杯のコーヒーの温もりを通じて、農村振興のもう一つの可能性を示している。それは農村を都市に変えることではなく、農村をより良い農村にすることだ。農民が自分たちの愛する土地で、誇りと希望を持って暮らせるようにすることだ。これこそが、「有風咖谷」から吹いてくる最も心を動かす風なのかもしれない。(c)東方新報/AFPBB News