【5月10日 東方新報】「北京一番街が日中交流の『架け橋』となり、両国の人びとがここを通じて互いの文化を理解し合える場になってほしい」。4月25日に行われた「第4回一番街春祭」で、一番街(北京)餐飲有限公司(以下、北京一番街)の副総経理、能勢亮一(Ryoichi Nose)氏はこう語った。酒樽の鏡開き、マグロ解体ショー、お好み焼きやたこ焼き――。海外に行かなくても、北京市で本場の日本の春の民俗文化を体験できる。その背景には、日中の若い世代が食文化を通じて互いに歩み寄る動きがある。

◾️「旅する」ように日本の雰囲気を体験

「一番街春祭」は、北京朝陽区麦子店の一番街で開催され、今年で4年目を迎えた。日本の春の風物詩を再現し、日本のグルメを集めたこのイベントは、北京の春を彩る特色ある文化イベントとなっている。数回の軽快な「コン」という音とともに、一番街春祭は儀式感あふれる酒樽の鏡開きで幕を開けた。続いて観客の大きな拍手の中、マグロ解体ショーが始まった。専門の料理人が鋭い包丁を手に、大きなマグロを丁寧にさばいていく。一刀一刀が正確で切れ味よく、力強い。身と骨がきれいに分けられるたび、会場からは驚きの声が上がった。

会場では餅つき大会も行われ、観客が次々と参加した。杵を持ち上げ、もち米を一つ一つついて餅にしていく。自分でついた餅の味は格別だ。このほか、会場には屋台も並び、お好み焼き、焼きそば、たこ焼き、さっぱりとした日本のビールが提供され、通り全体が日本の春らしい雰囲気に包まれた。街区に掛けられた日本風のちょうちん、展示された伝統的な甲冑の装飾、各店舗の工夫を凝らしたしつらえが、日本の路地裏にあるようなにぎわいを再現している。北京市民は遠出をせずに、日本の雰囲気を味わい、文化とグルメを楽しむ旅を体験できる。

◾️日中の若者が味覚で歩み寄る

「一番街春祭」はまだ4回目だが、北京一番街には10年以上の歴史がある。その歩みの中で、一番街餐飲有限公司の副総経理である能勢亮一氏は、日中の人びとが食を通じて互いに近づいていく様子を見てきた。能勢氏は一番街の運営責任者であるだけでなく、日本料理店の経営者でもある。中国で数十年生活しており、中国の食客の好みにも詳しい。

能勢氏によると、中国の「80後」「70後」の世代は、本格的な日本の味にそれほど強いこだわりはなく、主に日本らしい雰囲気を楽しむことを重視していた。そのため、初期の日本料理店ではさまざまな料理が一つの店に集まり、寿司、焼き肉、すき焼きが同じ店で提供されることもあった。この世代の中国人消費者が求めていたのは、異国情緒を味わうことだった。

一方、近年は中国の「90後」「00後」の若者が日本料理消費の中心になりつつある。中には日本旅行の経験を持つ人も少なくない。日本食への需要は、漠然と新しさを楽しむ段階から、本場の味を求める段階へと変化している。能勢氏は「若い中国人消費者は、寿司、ラーメン、お好み焼きなど、細分化された専門店をより好むようになっている。従来の何でもそろうビュッフェ式の日本料理とは違う消費スタイルだ」と話す。そのため現在の中国の日本料理市場では、寿司店、焼き肉店、すき焼き店、さらにはお好み焼き店のようなよりニッチな専門店の人気が高まっている。

能勢氏自身も一番街でお好み焼き店を2店舗営んでおり、北京の若者に人気を集めている。また、本場の日本の味を求めているのは中国の若い食客だけではないという。日本でも、本場の中国料理を求める動きが広がっている。現在、日本の若い世代の間では、本格的な中国料理を追求する流れが静かに広がっている。かつてのように日本向けにアレンジされたあっさり甘めの中華料理ではなく、四川・湖南料理のしびれる辛さ、東北地方のボリュームある料理、西北地方の味など、本場そのものの中国グルメを好む人が増えている。麻辣湯の店、四川火鍋、東北風焼き物などは、日本の若者の人気メニューとなっている。能勢氏は、日中の若い世代の食客は、味覚の面で互いに歩み寄っていると話す。そして、こうした文化の交わりは断ち切ることのできないものだと考えている。

◾️通りを橋に、民間交流の場へ

文化交流について、能勢氏にはさらに大きな願いがある。「このイベントの原点は、一つには日本の春祭りのにぎやかな雰囲気を再現し、北京に暮らす日本人に故郷の温かさを感じてもらうこと。もう一つは、日中の民間交流の橋を架けることだ」と語る。

能勢氏によると、一番街春祭を開催するために、専用の微信(ウィーチャット、WeChat)公式アカウントを開設したという。多くの人がこのアカウントを通じてイベントについて問い合わせている。2025年4月までに、公式アカウントを通じて1500人の中国人食客と微信でつながった。当初はイベントに関する相談だったものが、次第に中国のどこで本格的な日本料理を食べられるかという相談に変わっていった。能勢氏はそこに、日本文化を伝える責任を感じている。

能勢氏は、現在の一番街は単なるグルメストリートという位置付けを超えていると話す。今回の「一番街春祭」では、文化・観光に関する相談やビザ手続きなど、多様なサービスも取り入れられた。さまざまな要因の影響で、第4回春祭の来場者数は前年より減少したものの、民間交流への熱意は衰えていない。

今後のイベントへの期待を尋ねられると、能勢氏は、一番街では今後、二次元やアニメなど新しい日本文化の要素を取り入れる計画があると語った。同時に、朝陽区の地域コミュニティとの連携を模索し、中国の伝統民俗や中国グルメも取り入れ、日中文化の融合をさらに進めたいとしている。能勢氏は最後に、「一番街をプラットフォームとし、イベントをつなぎ役として、中国の人びとはじめより多くの外国の友人を引きつけたい。一番街を各国の人びとが交流する『架け橋』にしたい」と語った。(c)東方新報/AFPBB News