【5月9日 東方新報】中国南西部の雲南省(Yunnan)シーサンパンナ・タイ族自治州(Xishuangbanna Dai Autonomous Prefecture)は、北回帰線上に位置しながらも豊かな熱帯生態系が広がる地域として知られる。その中心部にあるシーサンパンナ熱帯花卉園は、都市の中に広がる大規模な緑地であり、観光地であると同時に、熱帯植物の保護と研究を担う重要な拠点となっている。

敷地面積は約1838ムー(約123万平方メートル)に及び、園内では1000種以上、1万点を超える植物の遺伝資源が保存されている。これらは単なる観賞用ではなく、将来的な品種改良や生物多様性の維持に役立つ基礎資源として位置づけられている。同園は、熱帯植物にとって北回帰線上の「ノアの箱舟」ともいえる存在で、中国国内のみならず、世界的にも貴重な保全拠点の一つとされている。

特徴的なのは、植物を単に収集・保存するのではなく、自然に近い環境の中で育成している点だ。園内では高木、低木、草本が階層的に配置され、熱帯雨林に近い構造が再現されている。この環境の中で、昆虫や鳥類、微生物がそれぞれの役割を担い、生態系の循環が維持されている。植物の保護は、標本として保管するのではなく、自然に近い形で世代をつないでいくことを重視している。

同園の前身は1953年に設立された熱帯作物標本園で、長年にわたり植物の導入や栽培研究が進められてきた。現在では、人工的に熱帯生態系を再現した先進的な事例としても評価されている。単一作物に依存するのではなく、多様な植物を組み合わせることで、相互に支え合う生態環境を築いている点が特徴だ。

また、シーサンパンナはタイ族の文化が色濃く残る地域であり、園内には伝統的な自然観を紹介するエリアも設けられている。タイ族の信仰と結びついた樹木や花を展示し、人と自然との関係について理解を深める場となっている。自然を敬い、共に生きるという考え方は、現代社会においても重要な示唆を与えている。

さらに、同園は国家級の科学普及教育基地としての役割も担う。園内では体験型の学習プログラムが行われ、子どもたちが植樹や観察を通じて生態保護の重要性を学んでいる。ゴム採取の実演や熱帯果樹の展示などもあり、自然資源を持続的に利用するための知識を身近に体験できる。

急速に都市化が進む景洪市において、シーサンパンナ熱帯花卉園は気温調整や水源の保全、空気の浄化といった環境機能を担う重要な緑地でもある。都市の生態バランスを支える存在として、その役割は今後さらに高まるとみられている。

シーサンパンナ熱帯花卉園は、長年にわたる研究と保全の積み重ねによって、熱帯植物の多様性を守り続けてきた。自然と人間の共生を目指す取り組みとして、その意義は今後も注目されそうだ。(c)東方新報/AFPBB News