ナイジェリアでまた拉致 武装集団が村人10人以上連れ去る
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【11月28日 AFP】ナイジェリア北部ナイジャ州で26日夜、武装集団が村々を襲撃し、少なくとも10人を拉致した。警察が27日、明らかにした。同国では大規模な拉致事件が頻発し、1週間で主に児童・生徒ら数百人が連れ去られたのを受け、ボラ・ティヌブ大統領が26日、「国家緊急事態」を宣言したばかり。
ナイジャ州警察の担当者は短い声明で、襲撃は26日夜に発生したと説明。地方行政区シロロの村々から「武装集団に約10人が拉致された」との通報を受け、被害者の救出に向けて動いているという。
一方、地元メディアは農民24人が拉致されたと報じている。
アフリカで最も人口の多いナイジェリアでは、国家による統制が及んでいないへき地で拉致事件が相次いでいる。
今回の拉致を含む集団拉致事件について、犯行声明を出した組織はない。
北西部と中部の農村部では長年、「盗賊団(バンディッツ)」と呼ばれる重武装した犯罪組織が跋扈(ばっこ)し、村々を襲撃しては住民を殺害し、身代金目的に拉致している。
北東部では16年にわたり、「ジハード(聖戦)」遂行を主張するイスラム過激派による反乱が激化しているほか、全土で不安定な治安情勢が続き、身代金目的の誘拐事件が頻発している。
大規模な拉致事件が頻発し、1週間で主に児童・生徒ら数百人が連れ去られたのを受け、ティヌブ大統領は26日、「国家緊急事態」を宣言した。
ティヌブ氏は、「現在の治安情勢を鑑み、国家緊急事態を宣言し、兵士の追加募集を命じる」と述べた。
先週末には、要人警護に当たっていた警察官を治安維持に当たらせるとともに、警察官5万人の追加採用を命じた。
欧州連合庇護機関(EUAA)によると、ナイジェリアではそれまで、推定37万1000人の警察官のうち、10万人以上が政治家などの要人警護に当たっていた。
2014年にはイスラム過激派組織「ボコ・ハラム」が北東部チボクで276人の少女を拉致。ナイジェリア全土を震撼(しんかん)させ、国際的な非難を浴びた。それ以降も、数千~数万件の拉致事件が認知されているが、通報されていないものもあるため氷山の一角にすぎない。
拉致事件のほとんどは金銭目的の犯罪組織によるもので、イデオロギー的な偏りは見られない。だが、こうした組織が北東部のイスラム過激派との連携を深めていることから、当局は頭を悩ませている。
人質解放の経緯の詳細は公表されるのはまれだが、ラゴスに拠点を置くセキュリティー・アドバイザリー会社SBMインテリジェンスの報告書によると、ナイジェリアでは2024年7月から2025年6月までの1年間で、拉致事件が997件発生。4722人以上が連れ去られ、762人以上が殺害された。
SBMインテリジェンスは、「(24年7月~25年6月の1年間に)ナイジェリアの身代金目的の拉致危機は、組織化された営利産業へと変貌を遂げた」と指摘しており、市場規模は数百万ドル(数億~数十億円)になっているという。
拉致事件では、学校や宗教施設など、大勢の人が集まる場所が狙われている。
ナイジェリアではここ数日、大規模な襲撃・拉致事件が相次いでおり、中等学校襲撃でイスラム教徒の女子生徒25人、教会襲撃でキリスト教徒38人、カトリック系寄宿学校襲撃で生徒と教師315人、農場襲撃で付近を歩いていた若い女性と少女13人、村襲撃で女性と子ども10人が連れ去られた。
ドナルド・トランプ米大統領は今月、ナイジェリアでキリスト教徒が「ジェノサイド(集団殺害)」されていると主張し、軍事介入をちらつかせているが、ナイジェリア政府はこの主張を否定している。(c)AFP