エイズ対策、資金不足深刻化 国連「数十年で最も重大な後退」
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【11月26日 AFP】国連は25日、国際機関への資金拠出の大幅な削減が世界のエイズウイルス(HIV)対策を混乱に陥れていると発表し、新規の感染が急増する恐れがあると警告した。
世界エイズ・デーを来週に控え発表された報告書で国連エイズ合同計画(UNAIDS)は、米国やその他の国々が今年、拠出する資金を突然削減したため、世界数十か国でHIV治療と予防を支えるエコシステムが「根本から揺さぶられている」と注意を促した。
UNAIDSのウィニー・バイアンイマ事務局長は「医療施設が予告なしに閉鎖され、数千人の医療従事者が職を失ったり給与を失ったりし、命を救うための検査、治療、予防サービスが広範かつ継続的に混乱に陥った」とスイス・ジュネーブで記者団に語り、「数十年で最も重大な後退となった」と述べた。
中でも、ドナルド・トランプ米大統領の再就任後に見られた米国の「突然の中断」の影響を指摘した。米国はこれまで最大の資金提供国だった。また、その他の主要な拠出国も支出を大幅に削減したことを強調し、「削減は全体的に劇的」で「壊滅的な結果」につながるリスクがあるとした。
報告書によると2024年には約130万人がHIVに感染した。これは2010年比で40%減だが、2030年までにエイズ終結を目指すという国連の目標を達成するために必要な水準よりも3倍以上高かった。
バイアンイマ氏は、今回の深刻な資金危機が起きる以前から、世界のエイズ対策は深刻な資金不足に直面していたと指摘。2024年の資金は187億ドルで、必要額を17%下回っていたと述べた。
昨年は、世界のHIV感染者4000万人以上のうち約920万人が治療を受けられなかった。また、13か国では治療を開始する人の数が前年比で減少していた。
こうした状況が放置されれば、2030年までに「330万人の新規感染」が発生する恐れがあると、バイアンイマ氏は警告した。(c)AFP