コルガス・一秒で国境を越える街・中国
このニュースをシェア
【11月29日 People’s Daily】コルガス市(Khorgas)は、新疆ウイグル自治区(Xinjiang Uighur Autonomous Region)イリ・カザフ自治州(Ili Kazakh Autonomous Prefecture)にあり、カザフスタンと国境を接している。歴史上、この地は古代シルクロード北ルートの要衝であり、現在では中国が西方に向けて国を開く重要な拠点となっている。
2012年、両国の国境線に隣接区域で構成される「中カ(中国・カザフスタン)・コルガス国際国境協力センター」が正式運用を開始した。このセンターは、中国が他国と共同で設立した初めての「国境を越えた経済協力区」である。独特の立地条件と優遇政策が、中カザフ両国の貿易取引、人的・文化的交流、そして両国民の相互理解を促進している。
午前10時頃、67歳のコルガス市民・李国梁(Li Guoliang)さんは妻と孫娘を連れ、出国手続きをする人たちに続いてゆっくりと歩みを進めた。彼は「ここから出て日用品を買いに行くよ」と話した。
李さんが向かう先は、まさに「中カ・コルガス国際国境協力センター」だ。センターは両国の施設が一体となっており、両国が出入り口をそれぞれ1つずつ設けている。両国の市民はパスポートや出入国通行証などの有効な身分証明書により、ビザなしで出入りできる。コルガスで生まれ育った李さんは、定期的にこのセンターを訪れる。「国境を越えるのは親戚の家に行くようなものだよ。とても便利だ」と話している。
「協力センター」に入り約15分歩くと「中カ接続通路」に到着する。ここから障壁なくスムーズにカザフスタン側に「入国」できる。この手軽な「出入国体験」は、多くの観光客から「一秒で国境を越える」と表現されている。
カザフスタンの蜂蜜、キルギスの毛布、ウズベキスタンのドライフルーツ・・・「協力センター」には現在5000以上もの店舗、約1200の販売業者が入り、40以上の国々から集めた1000種類以上の商品を販売しており、中国北西部最大の「越境観光消費ショッピングエリア」となっている。中国製の家電、家具、衣類などもここから中央アジア、西アジア、ヨーロッパなどへ輸出されている。今年に入ってからの「協力センター」の利用者数は延べ600万人を突破し、前年同期比66%増となった。
昼時、ディルナズ食堂から美味しそうな香りが漂ってくる。厨房では、トクタバエワ(Toktabayeva)さんが黄金色でサクサクの焼きパオズ(焼包子)を弁当箱に詰め、傍らにいるグリシャラ(Gulshala)さんが素早く受け取って手際よく袋詰めしている。トクタバエワさんはカザフスタン出身で、グリシャラさんはコルガス市民だ。二人はこの「国境を越えたレストラン」を共同で経営し、実の姉妹のように仲が良い。
トクタバエワさんは「今は、カザフスタンと中国のビザ相互免除で、往来がとても便利で、お互いの国に行くのは本当に『家に帰る』ような感覚だ」と話す。
「厳選された」「物が良くて安い」「本物で買う価値がある」・・・、「コルガス義烏国際貿易商城」内の教室では、カザフスタンから来た「中カ国際言語学院」の研修生たちが輪になって座り、中国人の先生の後に続いて黒板に書かれた言葉を真剣に復唱している。
今年4月「中国(新疆)自由貿易試験区コルガス地区」に初めてやって来た研修生として、彼らは義烏国際貿易商城などの企業で実習を行いながら、「中国語+越境Eコマース」、「中国語+国際貿易」などの研修課程を受講している。
18歳のカザフスタン人女性、チェパソワ・ルフィーナ(Chepasova Rufina)さんは中国語を学びながら、越境Eコマースライブ配信も学んでいる。彼女は「中国人の先生はネットユーザーとの交流方法やユーザー体験の向上を教えてくれた。中国に来たばかりの頃は簡単なあいさつしか出来なかったが、今では自信を持って商品を販売できるようになった。中国人の友達をたくさん作って、カザフスタンと中国の優れた製品を紹介し合いたい」と語っている。
「協力センター」内では「コルガス市人民医院(国境地区医院)」の無料診療所には大勢の人が詰めかけていた。「イリ・カザフ自治州中医医院」の主治医・劉飛(Liu Fei)さんと同僚たちはここで、忙しく診療に追われていた。
カザフスタン人の患者・ラヒムジャン(Rahimjan)さんは長年偏頭痛に悩まされていたが、劉医師の脈診や説明を受けて、鍼(はり)治療を試してみることにした。「カザフスタンでは、中医の効果が高いとよく聞いていたが、今日初めて体験して、とても気持ちがいい」、ラヒムジャンさんは親指を立てて称賛した。
劉医師は「ますます多くのカザフスタン人が中医に関心を持ち、中医を利用して健康状態を改善し、生活の質を高め始めている。私たちは中医が、より多くの人に健康をもたらし、友情の架け橋を築くことを願っている」と語った。
近年、コルガス市は国際医療サービスの能力向上に注力し、国際医療商業保険や越境医療保険などの連携メカニズムの構築を模索し、国内外の患者に効率的で便利な医療サービスを提供し、中央アジア地域をカバーする「国際医療サービスセンター」の構築を目指している。
市人民医院は23年7月、正式に「国境地区医院(国門医院)」の認可を受け、対外医療の資格を取得した。今年1月から6月までに、同医院は外国人患者延べ205人を受け入れ、無料診療を54回開催し、延べ1035人に無料の医療検査と診断サービスを提供した。
協力センター、職業教育協力、そして国境医院に至るまで「一秒で国境を越えられる」コルガス市の立地がもたらす恵みは、生活の便利さだけでなく、隣国の人びととの心の交流と友情の深まりなのである。(c)People’s Daily /AFPBB News