【三里河中国経済観察】中国、第15次五か年計画で産業技術が加速
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【11月10日 CNS】技術革新と構造転換が加速する中、清華大学(Tsinghua University)研究者の董煜(Dong Yu)氏が中国経済の構造転換と新興産業のチャンスを指摘した。
「第15次五か年計画(十五五)」の期間は、中国が社会主義現代化をほぼ実現するための基盤を固め、全方位で発展を加速させる重要な時期となる。清華大学中国発展計画研究院の董煜常務副院長は、構造的課題と技術革新の機会が交錯するこの時期に、中国経済が直面する問題と新たな産業の可能性について見解を示した。
◾️経済の構造転換が焦点に
董氏によると、今後5年間の中国経済は、産業構造・地域構造・都市農村構造・人口構造の4つの側面で構造的課題を抱えている。産業構造では、不動産など従来の成長エンジンの勢いが弱まる中、「新興支柱産業」を育成して新たな経済の柱とすることが最大の焦点となる。
地域構造については、従来の東西格差という視点に加え、「主体機能区戦略」の進展により地域発展の計画が細分化されている。董氏は、西部地域の成長拠点が周辺をどこまで牽引できるか、既存の成長機会を持続させ、新たな成長源を生み出せるかが重要になると指摘する。
都市と農村の構造では、都市化率が67%に達した今、農村人口が都市に移動した後の公共サービスの整備が経済に大きな影響を及ぼすという。住宅や消費の分野とも密接に関連しており、人口移動を通じて経済成長をどう強化するかが問われている。
人口構造面では、今後も大学卒業生数が過去最高を更新する一方で、総人口は減少局面に入る。人口動態の変化は公共サービスやインフラ整備の計画にも影響し、新たな雇用圧力が生じるとみられる。
◾️新興産業が次の成長エンジンに
董氏は、「十五五」期の産業発展の核心は「新質生産力」の育成と新旧動力の転換にあると述べる。新エネルギーや新エネルギー車などの分野はすでに優位性を確立し、高端装備なども追い上げを見せている。さらに、バイオ医薬やロボット産業なども成長が加速しており、「十五五」期の経済成長をけん引する存在になると予測している。
脳–機械インターフェースや量子技術などの「未来産業」については、実用化の時期は不透明だが、今のうちに資源を集中投入し、発展の潮流を逃さないことが重要だと指摘。中国は産業体系が幅広く、技術革新が応用へとつながりやすい構造を持つため、成果の実用化スピードでは他国を上回る可能性があると述べた。
地方政府の意欲も高く、各地で将来有望な産業を分析・育成する動きが活発化している。董氏は、「中国はAI主導の産業革命の波を逃さず、一部分野では先行できる」と自信を示す。
また、人材育成は各地の「十五五」計画で共通の重点項目となっており、地方政府はスタートアップ支援や人材誘致を積極的に推進している。AI分野では、深度求索(DeepSeek)の登場を「ゼロから1」への突破口とし、中国は「1からN」へと拡大する能力に長けていると指摘。AIは国家競争力の核心であり、スピード重視の姿勢が必要だと強調した。
董氏は、「地方政府の積極的な行動と、世界最大規模のSTEM(科学・技術・工学・数学)人材供給が、中国の産業と科学技術分野に再び爆発的成長をもたらすだろう」と述べた。
◾️「反内巻」政策で健全な競争環境を
近年、中国各業界では「内巻」と呼ばれる過度な競争の是正が進む。董氏は、模倣や横展開の速さが内巻の一因であり、過剰競争が中小企業の生存を脅かしていると指摘する。
現在の政策は、特定企業の抑制ではなく、産業全体の健全なエコシステムを維持することを目的としている。大企業が市場を独占しないよう適度な調整を行い、産業全体の共生と繁栄を目指す考えだ。
董氏は、今回の「反内巻」政策は従来の供給側改革とは異なり、消費者に直接関わる産業を対象としている点が特徴だと説明。政府は「悪性競争」を明確に定義し、必要な場合のみ規制を発動するなど、柔軟かつ市場原理を重視した対応が求められると述べた。
また、7月30日の中央政治局会議では、企業家に対し「潮流の先頭に立ち、優れた製品とサービスで市場を制すべし」との方針が示された。董氏はこれを「質の高い発展と健全な競争を促す明確な方向性」だと評価している。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News