【8月11日 CNS】中国政府が進める「二重建設」(国家の重大戦略実行と重点分野の安全保障能力向上を支える取り組み)が注目を集めている。これは超長期特別国債を財源として進められており、中国経済の現在と将来を理解するうえで欠かせないテーマだ。着手から1年以上が経過し、その成果や仕組み、今後の見通しを評価する意義は大きい。

■国家戦略に直結する特別な政策

「二重建設」は、従来の一般的な経済政策とは異なる性格を持つ。
背景には、中国共産党第20回党大会で打ち出された中長期の重要戦略がある。これを具体的な事業で早急に実現する必要があり、五か年計画の中間期にあたる2024年の全国人民代表大会で正式に審議・導入された。

この取り組みは、中国式現代化の長期目標を具体化し、ボトルネックとなる課題に集中的に取り組むものだ。国際環境の不安定さを踏まえ、食料・エネルギー・産業・生態の安全を強化することも大きな柱であり、先手の安全保障策としての性格も強い。

また、投資、財政、科学技術、教育、社会、環境など幅広い分野を一体的に動かす総合政策でもあり、中国の経済社会全体に波及効果をもたらすことが期待される。

■超長期特別国債で支える大型プロジェクト

「二重建設」は、国家の意志を体現する取り組みだ。超長期特別国債という極めて例外的な財政手段を用い、2024年は7000億元(約14兆3326億円)、2025年は8000億元(約16兆3801億円)がすでに全額執行された。

投資先は、都市と農村の融合発展、地域間の均衡発展、人口の質的向上、食料・エネルギー・生態安全、科学技術の自立強化など、国の将来を左右する分野が中心だ。従来のように地方の申請ベースで決めるのではなく、国家が優先課題を特定し、自上而下でプロジェクトを推進する点も特徴的である。

■ハード整備と制度改革の両立

この取り組みは、単なる大型インフラ投資にとどまらない。事業を長期にわたり安定して運営するために、制度や仕組みづくりといった「ソフト面」の整備も重視している。

たとえば、都市のガスや上下水道、暖房の管網整備では、民間資本が長期的に投資しやすくなるよう、運営権や補助金、税制優遇などを組み合わせる。天然ガスや水道料金の市場化を進める取り組みも、公共事業の赤字軽減と民間参入促進につながる。

また、大学の本科教育拡充では、拡大計画の達成度に応じて支援額を増減する仕組みを導入。学科編成を柔軟に調整し、人材育成を社会・経済ニーズに適合させる仕組みづくりが進められている。

■国民生活に直結する効果

「二重建設」で進められる事業は、規模の大小ではなく、国家戦略としての重要性で位置づけられている。

都市インフラの整備では、老朽化したガス管網の更新で事故率が30%以上低下し、市民の安全性が向上する。

農業では、高標準農地の整備により食料の安定供給と食品安全が強化される。

長江(揚子江、Yangtze River)流域の下水管網改修では、総延長6万キロ以上の整備を計画し、長年の環境問題解決に道を開く。

交通では、上海市と成都市(Chengdu)を結ぶ最短1900キロの高速鉄道で移動時間が半減し、東西都市圏の連携が強化される。

さらに、「三北」防護林事業(中国北方の「東北・華北・西北」の3地域で進められる世界最大級の植林・防風林造成計画)の進展は北方の生態安全を高め、地域住民の収入向上にもつながる。

教育面でも、学生寮50万床の増設や本科入学者数の拡大により、より多くの若者に質の高い教育機会が提供される。

■長期的に国家競争力を支える基盤

「二重建設」は短期的な景気刺激策ではなく、中長期の国家戦略を支える基盤整備である。実施からまだ日が浅いが、投資や雇用を通じて内需を下支えし、経済の安定にも寄与している。

今後は第15次五か年計画の中でも重要な位置を占め、国家戦略や主要プロジェクトと緊密に連動する。国際情勢の不確実性が高まるなかで、長期的な競争力の強化と発展の安定に向けた役割は一層大きくなるだろう。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News