【三里河中国経済観察】中国「十五五」計画、世界へのチャンスリスト
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【8月6日 CNS】中国では5月20日から、「第15次五か年計画(十五五)」の策定に向け、オンラインでの意見募集が始まった。今年は例年よりも早く作業がスタートしており、党中央が五か年計画を非常に重視していることを示している。
今回の十五五計画の策定を取り巻く環境は、「十四五」期間と比べて大きく変化している。国際的には、大国間の競争が一段と激しくなり、科学技術革新が加速し、世界経済構造が再編され、国際ガバナンスは変革期を迎えている。こうした外部環境の変化は、十五五計画の策定方針に影響を与えることは避けられない。国内では、中国共産党第20回党大会の報告が2035年の長期目標を修正し、基本的な現代化の方向性をより明確に示した。また現在の経済は、五年前よりも安定成長の難しさが増しており、人口問題や外部リスクなど、中長期的な課題も顕在化している。
「十四五」策定時には、国内外の環境変化に対応するため、新しい発展段階、新しい発展理念、新しい発展構造の三つを柱とした。特に「新しい発展構造」を示したことは、十五五を見据えたうえでも先見性があったと言える。
五か年計画の策定には、変わらない部分と変わる部分がある。変わらない部分としては、第20回党大会の方針を着実に具体化することだ。教育・科学技術・人材の強化、近年重点的に進められてきた「二つの重点」や「新質生産力(科学技術主導の新しい高付加価値生産力)」の推進は、今後も一貫して取り組まれる。一方で、変化する部分としては、最新の情勢に合わせて強調すべき課題がある。その中でも最も重要なのは内需の拡大である。国内の大きな循環を強めるには、五か年計画の中で体系的に取り組む必要がある。2025年の政府活動報告でも内需拡大が最優先課題として掲げられており、十五五でもこの点がより鮮明になる。また、人口や民生といった中長期課題への対応も、計画の中で具体化されるだろう。
さらに、十五五期間は2029年のさらなる改革深化や、2030年のカーボンピーク達成といった重要な節目と重なる。計画策定では、これらとの連動も意識する必要がある。「十四五」では、5年間の平均GDP成長率は明示されず、「合理的な範囲を維持し、各年度の状況に応じて提示する」とされた。現在の不確実性を踏まえると、十五五でも成長目標の区間設定は慎重に行う必要がある。市場に対しては、たとえ具体的な年平均成長率を示さなくても、安定成長を最優先に据え、政策の着実な実行を通じて、中国の成長可能性の幅を明確に示すことが重要となる。
十五五計画は、いわば世界に向けた「発展のチャンスリスト」である。市場主体がこの機会を生かせるかどうかは、全面的な改革深化が実行されるかにかかっている。中共中央が発表した「中国式現代化を推進するための全面的改革深化に関する決定」では、300を超える重要な改革措置が示されており、多くは十五五計画にも反映される見通しだ。特に、市場経済の基盤整備に関する改革は、財産権保護、市場参入、公平競争、社会信用制度という四つの基本制度を含み、中国経済の競争力や社会の信頼感に直結する。関連法規も整備が進みつつあり、十五五期間には各地で着実に実行することで、経済の前向きな効果が期待される。今後は特に、公平競争や競争政策の推進が重要な焦点となるだろう。
これまで市場関係者は、五か年計画の中の「新しい表現」に注目しがちだったが、策定側の視点では、真に重視すべきは長期的な発展機会である。新しい言葉でなくとも、目標や政策方針に連続性や広がりがあれば、それこそが中長期の市場機会につながる。
世界経済が大きく揺れる中でも、準備をした者にチャンスは訪れる。党中央が強調する「自国のことは揺るがずにやり切る」「高水準の対外開放を揺るがず拡大する」という二つの姿勢は、深い意味を持つ。不確実性が増す世界において、十五五計画は中国が示す明確な答えであり、それ自体が国内外にとって発展の好機となる。(c)CNS-三里河中国経済観察/JCM/AFPBB News