【8月29日 AFP】国連の人権専門家7人は28日、米国とイスラエルの支援を受けてパレスチナ自治区ガザ地区で人道支援物資の配給を行う「ガザ人道財団(GHF)」の配給拠点で、飢えに苦しみ食料を求めるパレスチナ人が「強制失踪」させられているという報告について懸念を表明し、イスラエルに対しこの「凶悪犯罪」を終わらせるよう強く求めた。GHFは、同財団の配給拠点で強制失踪が行われた「証拠はない」と述べている。

7人は独立した専門家で、うち5人は、フランチェスカ・アルバネーゼ特別報告者(パレスチナ自治区の人権担当)やマイケル・ファクリ特別報告者(食料への権利担当)ら 国連人権委員会の強制的・非自発的失踪に関する作業部会のメンバー。特別報告者は国連人権理事会によって任命されるが、国連を代表する立場にはない。

人権専門家7人は、「食料への権利という基本的権利を求める飢餓に苦しむ民間人を標的とした強制失踪に関する報告は、衝撃的であるだけでなく、拷問に当たる」と指摘。

「標的を絞った大量失踪の手段として食料を利用することは、直ちにやめなければならない」と述べた。

7人の声明によると、イスラエル軍がこの件に「直接関与」したと報告されている。イスラエル軍は「自由を剥奪した人々の安否と所在に関する情報の提供を拒否」しており、これは国際法違反に当たるという。

■「凶悪犯罪」

国連は先週、イスラエルが人道支援物資搬入を「組織的に妨害」していると非難し、ガザで飢饉(ききん)が起きていると宣言した。

イスラエルは、国連が供給した援助物資をイスラム組織ハマスが略奪していると非難し、3~5月にガザを完全封鎖した。

イスラエルが封鎖を緩和し始めると、GHFが設立され、長年続いてきた国連主導の支援体制は事実上脇に追いやられた。

人権専門家7人は、「混雑した配給拠点とその周辺では、空爆と毎日の銃撃で、多数の死傷者が出ている」と指摘。

「GHFには安全な配給拠点を用意する義務があり、そのために民間の軍事会社と契約している」と述べた。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は先週、GHFが活動を開始した5月下旬以降、食料を受け取ろうとしたパレスチナ人1857人が殺害された殺害されたと発表した。うち1021人はGHFの配給拠点付近で殺害された。

人権専門家7人は、「GHFの配給拠点は、打ちのめされた人々が強制失踪させられるというさらなるリスクをもたらしている」と警告した。

GHFはAFPの取材に対し、「私たちが活動しているのは交戦地帯で、拠点外で活動するすべての勢力に対して深刻な疑惑がかけられている。だが、GHFの拠点内に関しては、強制失踪の証拠はない」と述べた。

人権専門家7人はイスラエル当局に対し、「既に脆弱(ぜいじゃく)な立場にある人々に対する凶悪犯罪に終止符を打つ」よう強く求めた。(c)AFP