中国の「阿膠」産業でアフリカのロバ激減 慈善団体が指摘
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【6月27日 AFP】英国の慈善団体は26日、毎年約600万頭のロバが中国の伝統薬のために殺されており、ロバに依存するアフリカの人々に深刻な影響を及ぼしていると発表した。
この問題の背景にあるのは、ロバの皮を材料に作られる中国の伝統薬「阿膠(あきょう)」だ。中国の調査会社によると、その市場規模は68億ドル(約9800億円)に上る。
中国ではロバの個体数が1992年の1100万頭から2023年には150万頭に激減していたため、その需要を満たすために別の調達先を確保する必要があった。その対象となったのがアフリカだった。
ロバの個体数はアフリカでも減少した。こうした状況を受けてアフリカ連合(AU)は昨年、屠殺などのロバ取引に関する行為を15年間中止するよう求めた。
この問題について、英国に拠点を置く慈善団体「The Donkey Sanctuary」は、「阿膠産業がロバの皮の大規模な国際取引を引き起こしている。そして、その多くは違法だ」と指摘。同団体によれば、昨年、世界で約590万頭のロバが殺されたという。
阿膠の取引により、27年までに少なくとも680万頭分のロバの皮が材料として必要となることが予想されている。
このように需要が上昇する中で、ロバ自体が不正に取引されるケースや窃盗の対象となるケースも増えている。
同団体によると、弱い立場の人々に安値でロバを売らせたり、夜間に盗んだりする違法行為を行う、大規模な組織的ネットワークも存在するという。
こうした社会問題では、特に女性や子どもへの影響が大きい。弱い立場の人々は、農作物などの市場への運搬手段としてロバに依存しているためだ。
違法行為による健康面へのリスクもある。
「適切に処理されていない皮の輸送やロバの死骸の不適切な処分により、感染症の拡散や地域の生態系への影響リスクがある」とThe Donkey Sanctuaryは指摘している。(c)AFP