栄昌の鹵鵝、米国ユーチューバーきっかけで世界的人気に
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【4月22日 東方新報】最近、中国のインフルエンサー「栄昌江哥」(本名:林江<Lin Jiang>)が、米国の人気YouTuber・IShowSpeed(中国語では「甲亢哥<Jia Kang Ge>」)のライブ配信に同行し、地元名物「栄昌鹵鵝(煮込みガチョウ)」を熱心に紹介したことが話題になった。SNS上では「栄昌鹵鵝哥(煮込みガチョウ兄さん)」というあだ名までついた。
彼はカタコトの英語と飾らない人柄で、「甲亢哥」と交流を深めながら栄昌鹵鵝を世界中の視聴者にアピールした。
「Eat, eat, This is Rongchang braised goose(食べて、これは栄昌の煮込みガチョウだよ)」――四川省(Sichuan)の成都市(Chengdu)でのライブ配信中、「栄昌江哥」は重慶なまりの英語で呼びかけ、甲亢哥はその場で豪快に鹵鵝を頬張った。このシーンはSNSで一気に拡散され、重慶市(Chongqing)栄昌区(Rongchang)の名物・栄昌鹵鵝は、世界から注目を集める存在になった。
その後、「栄昌江哥」は甲亢哥とともに、地元・重慶市栄昌区を皮切りに、香港、深セン市(Shenzhen)、長沙市(Changsha)など中国各地をまわり、行く先々でファンを増やしていった。長沙での番組収録では、甲亢哥と一緒に出演し、テーブルの中央に栄昌鹵鵝を並べてしっかりとアピール。配信の最後には、甲亢哥を米国に招待し、自身も「栄昌に来てほしい」と呼びかけた。
この影響で、栄昌鹵鵝のネット露出は約40倍に増加。ライブ配信での売上も2倍、店舗によっては300%以上の伸びを記録し、ある企業では10日間で売上が10倍になった。
現在、栄昌では年間300〜400万羽のガチョウが加工され、年間売上は約3.2億元(約624億3072万円)にのぼる。主要ブランド「三惠鵝府」「小羅鹵鵝」などが、重慶や成都などに日々出荷し、空港や鉄道駅、ECサイトでも広く販売されている。
「一目見たらもう離れられない」。栄昌では、そんなキャッチフレーズがある。鹵鵝は広東省(Guangdong)と四川省の料理文化を融合した味が特長で、香り高く、辛さやコクも兼ね備えている。
本場の鹵鵝は、黄金色に輝く見た目、骨までしっかり味が染みたやわらかい肉、香ばしくクリスピーな骨、20種類以上のスパイスで丁寧に煮込まれることで生まれる奥深い味わいが魅力。調味料もこだわり抜かれており、手作りの唐辛子油や鶏ガラスープをベースにした秘伝のタレが欠かせない。
こうした人気を背景に、栄昌区は「鹵鵝経済」の本格展開に乗り出している。2026年までに売上10億元(約195億960万円)超を目指し、リーダー企業や流通網の整備、オンライン販売の強化など、全体の産業チェーンを構築中だ。
すでに抖音(Douyin)や淘宝(タオバオ、Taobao)など大手ECと連携し、売れ筋商品の企画や人気インフルエンサーとのコラボも進めている。今後はライブ配信向けの人材育成やネット販売店の新設、物流拠点の整備など、デジタル対応も加速させていく。
さらに、「鹵鵝+麺」「鹵鵝+火鍋」「鹵鵝+BBQ」などのコラボ商品を開発し、食イベントや観光、スポーツなどとも連動したマーケティングも展開している。
5月の労働節(メーデー)には、「鹵鵝グルメフェス」や「鹵鵝職人コンテスト」「ガチョウ王のオークション」など多彩なイベントを予定。5月11日の栄昌ハーフマラソンでは、給食所で鹵鵝が提供され、完走者には鹵鵝がデザインされたメダルが贈られ、上位入賞者には鹵鵝の詰め合わせが授与される。
「栄昌鹵鵝」がきっかけで、栄昌という小さな町は、グルメを通してその存在を世界に知られるようになった。ただの名物ではなく、人と人、文化と文化をつなぐ「まちの顔」として、今後ますます存在感を高めていきそうだ。(c)東方新報/AFPBB News