【1月31日 AFP】ドイツのアンゲラ・メルケル前首相は30日、自らが所属する中道右派政党「キリスト教民主同盟(CDU)」のフリードリヒ・メルツ党首が2月23日に実施される総選挙の争点となっている移民問題で極右に頼ったと非難した。

メルツ氏は29日、連邦議会(下院)で、政府に移民の全面的な制限を求める決議案を極右政党「ドイツのための選択肢(AfD)」の支持を得て可決させた。

中道左派政党「社会民主党(SPD)」所属のオラフ・ショルツ首相と連立政権に加わっている緑の党は決議案の可決について、極右政党とのいかなる協力も禁じるという戦後ドイツのタブーを破る行為だと非難した。

ニュースサイト「シュピーゲル」は、「この日は選挙戦だけでなく、ドイツ政治全体を変える日になるだろう」と評価した。

また中には、メルツ氏の策略がAfDの正当性を高め、さらなる協力への道を開くと警告する声も上がった。域内一部で見られる流れを反映し、いずれは政府内での協力につながる可能性もある。

こうした声に対しメルツ氏は、原則よりも実利を優先させるべきだと主張。さらに、先週のアフガニスタン人の男が幼稚園児らを刃物で襲撃した事件など、難民認定希望者による凶悪事件が相次いでいることを受けて、市民が不安を抱いていると指摘した。

メルツ氏もAfDには反対しているが「間違った人々が同意したからといって、正しい決定が間違ったものになるわけではない」と訴えた。

自身の政権下で100万人以上の難民認定希望者を受け入れたメルケル氏は、2021年に退任し、以降、政治へのコメントを一切避けてきたが、この度のメルツ氏の策略に対しては「間違っている」と声を上げた。これは事実上、ショルツ氏と緑の党の側に付く発言と言える。

メルケル氏は、将来このような恐ろしい攻撃を防ごうとする民主主義政党は、「誠実かつ穏健に、適用される欧州法に基づいて」協力しなければならないと主張した。

一方、CDUのカーステン・リンネマン幹事長はメルツ氏を擁護。「われわれはアンゲラ・メルケル氏を高く評価しており、彼女の移民政策の評価も知っている」と前置きした上で、「きょう責任を負っている人々は、現在の治安状況と恐ろしい出来事に対処しなければならない」と述べ、昨年のクリスマスに発生した車突入事件にも言及した。