■1月31日(水) 国境で昼食

 ベルギー国境まであと少しの位置にあるロンウィー(Longwy)で休憩を取った。ここで、リディさんたちは、死ぬ権利を訴える活動をしているクローデット・ピエレ(Claudette Pierret)さんと落ち合った。リディさんに、安楽死の手続きを行ってくれるベルギー人医師のイブ・ド・ロクト(Yves de Locht)氏を紹介してくれたのもピエレさんだ。

 テーブルにごちそうが並べられると、「誕生日みたい!」とリディさんが軽口をたたいた。かと思うと、急に真顔になり、「あっち(天国)に行ったら、安らかな気持ちになって少しは休めるといいな」と話した。

「疲れた。毎日、闘うのに疲れた。自分の病気にも障害にも、いろいろなこと全部に」

「一日中ずっとふざけて、おしゃべりしているけれど」「ここに見えているものは」とリディさんは自分の顔を指さしながら言った。「心の奥底にあるものとは違う」

 食事を終えると、リディさんとピエレさんは家の前で別れを告げ、ワゴン車は再びブリュッセルに向かって走りだした。リディさんの一日はまだ終わらない。

 病院に到着すると、リディさんは海辺をテーマにした内装の広い部屋に案内された。

「さてと、死刑囚の最後の夕食は何かな?」とリディさんがおどけた。