【11月23日 東方新報】中国国家統計局によると、2021年末で中国の60歳以上の人口は2億6736万人に上り、全体の18.9パーセントを占める。65歳以上でも2億56万人で、日本の総人口をはるかに超えている。

 中国では高齢者のケアモデルは「9073」と言われている。老後を自宅で暮らす人が90パーセント、地域の社区(コミュニティー)を基盤に過ごす人が7パーセント、施設に入所する人が3パーセントという目安だ。老後を介護施設で過ごす割合が増えている日本と対照的で、「親の面倒は子どもが見る」という中国の伝統的家族観が下地にある。

 だが、中国の働き盛りは今や大半が一人っ子。しかも親と離れて都心に暮らす人も多い。このため、高齢となった親の生活を便利にしようと、子どもが最新の家電製品を購入する「親孝行経済」が活発になっている。高齢者用に購入されている家電の70パーセントは、その子どもたちが買っているというデータもある。

 ただ、そんな親への愛情が必ずしも報われていないのが実情だ。

 北京で働く呉暁珍(Wu Xiaozhen)さんは江西省(Jiangxi)の実家で暮らす母親のため、自動食洗機やスマート掃除機をプレゼントしている。しかし、実家に戻ると、家電は使われていなかった。母親は「ボタンが多すぎて操作できない。間違ったボタンを押すと元に戻せないのよ。もう、自分で洗い物や掃除をした方が楽で…」と申し訳なさそうに話していた。

 中国ではさまざまな機能がついたスマートテレビも増えているが、インターネットで「スマートテレビ」と検索すると、「操作方法」という表示が最初に出てくるように、「スマート家電が増えると生活が不便になる」とも言われている。高齢者なら、なおさら苦労する。

 そうした現状を受けて、大手家電メーカーは、ボタンを大きくした洗濯機、文字を大きくしたエアコンのリモコン、警報機能付きインテリジェント給湯器など、「適老化(高齢者向け)家電」に力を入れている。美的集団(Midea)は高齢者に優しいハイテク家電ブランド「美頤享」を設立。格力電器(Gree Electric)、海爾(ハイアール、Haier)、パナソニック(Panasonic)なども高齢者向け家電を発表している。

 中国では2035年前後には60歳以上が総人口の30パーセントを超え、4億人超に達するという。将来を見据え、業界にとっても当事者にとっても、高齢者向け家電が必須となっていく。(c)東方新報/AFPBB News