【11月1日 AFP】パキスタンに約170万人いる不法滞在のアフガニスタン人に対し、自主的に帰国しなければ強制送還するとした政府の期限が迫る中、10月31日には3万人近くが国境検問所に列をつくった。

 パキスタンには、アフガニスタン人数百万人が暮らしている。そのうち、推定60万人が、イスラム主義組織タリバン(Taliban)がアフガニスタンの実権を再び掌握した2021年8月以降に避難してきた。

 パキスタン政府は11月1日から、帰国を拒否する不法滞在のアフガニスタン人を、新設した収容施設に移送し、強制送還の手続きをすると発表していた。

 パキスタンのサルフラズ・ブグティ(Sarfraz Bugti)内相は動画で、11月1日までは自主的な出国が認められるが、2日からは強制送還を行うと宣言した。

 政府高官によると、カイバル・パクトゥンクワ(Khyber Pakhtunkhwa)州の国境では10月31日午後に少なくとも1万8000人が7キロにも及ぶ列をつくった。

 入管当局によると、南部バルチスタン(Balochistan)州の検問所には約5000人が押し寄せた。

 タリバン暫定政府のモハマド・ヤクーブ( Mohammad Yaqoob)国防相は、パキスタンの方針は「残酷で野蛮」だと非難している。

 ペシャワル(Peshawar)に住むアフガニスタン人の少女(14)はAFPに、滞在に必要な書類はないができるだけ長くパキスタンに残るつもりだと話した。

「アフガニスタンでは教育が受けられなくなるから私たちは故郷には帰らない」「父には、もし自分がパキスタン当局に逮捕されても帰るなと言われている。アフガニスタンには人生がないから」と語った。

 首都イスラマバードでは、複数のアフガニスタン人学校が10月31日から休校している。教師らはAFPに、生徒が家族と一緒に身を隠しているからだと説明した。

 市内では警察と政府関係者の立ち会いの下、貧しいアフガニスタン人が住んでいた、泥で造られた違法建築の取り壊しが行われていた。

 難民の両親の元にパキスタンで生まれた男性(35)は自宅がブルドーザーに崩されるのを見ながら、「もうたくさんだ。道を教えてくれればきょうにも車を手配して出て行く。こんな屈辱には耐えられない」と嘆いた。

■前例のない取り締まり

 パキスタンは、アフガニスタン人の強制送還は国の「福祉と治安」を守るためだとしている。

 アフガニスタン難民の長期的な滞在が、パキスタンのインフラに大きな負担となっており、今回の方針は国民から幅広い支持を得られていると強調している。

 弁護士や人権活動家らは、今回の取り締まりは前代未聞の規模だと指摘。当局に対し、アフガニスタン人が尊厳を持って去ることができるよう、もっと時間を与えるよう訴えてた。帰国を迫られている人の中には、数十年間パキスタンに住んでいる人もいる。

 国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチ(HRW)は10月31日、パキスタン政府は「脅迫、暴力、拘束」を用いて帰国を強制していると指摘した。(c)AFP/Lehaz Ali