【10月13日 東方新報】フランス発のスーパーマーケット、カルフール(Carrefour)の中国の店舗が次々と閉店している。3月下旬に北京市の創益佳店(Chuangyijia)の閉店が伝わった時にはなんとも寂しい思いがした。1995年から続いた同店はカルフールの中国進出第1号店であり、中国初の本格的な大型スーパーと言える存在だった。

 その感傷に浸るのもつかの間、上海市や広東省(Guangdong)広州市(Guangzhou)といった大都市も含めた各地の店舗が相次いで閉店。9月半ばには、北京で最後に残った四元橋店(Siyuanqiao)が営業を「一時停止」した。これまでに営業を停止した北京の店舗は「改装のため」などと説明してきたが、いずれも営業再開のめどは立っていない。

 ピーク時には中国国内の店舗が321店に達したカルフールだが、2009年から業績が低下。同年、ネット通販大手蘇寧易購(Suning)にカルフール中国の株式の80パーセントが買収されたが、その後も業績はふるわず、昨年30店舗、今年前半に100店舗以上が閉鎖された。

 大型スーパーの苦境はカルフールだけではない。

 ウォルマート(Walmart)も長春市(Changchun)、陝西省(Shaanxi)、江西省(Jiangxi)、山東省(Shandong)、北京市などで相次いで閉店。理由は「店舗の賃貸契約が満了し、契約を延長しない」などとしている。

 小売チェーン大手の華潤万家(CR Vanguard)も長沙市(Changsha)、江蘇市(Jiangsu)、広州市、アモイ市(Xiamen)などで少なくとも5店が閉店。その理由は明示されていないが、華潤万家は近年、赤字が伝えられてきた。

 大型スーパーの閉店ラッシュをもたらしたのは、Eコマースの隆盛だ。中国では、日用品や生鮮食品でさえネットで購入でき、その日のうちに配達してくれる。コロナ禍で外出禁止や、非接触での買い物が推奨されたこともネット販売を勢いづけた。

 北京師範大学(Beijing Normal University)経済・工商管理学院の許敏波(Xu Minbo)准教授は「Eコマースの出現により、各地域の消費者に合わせて流通や販売を差別化してきたスーパーの強みが失われつつある」と指摘する。ネットでのショッピングでは、消費者はもはや購買範囲の制限を受けず、全てのプラットフォームでの価格の比較さえ可能となる。プラットフォーム間の競争によってネット販売での商品価格は下がり、流通や店舗の賃貸料などのコストがかかるスーパーは価格競争で劣勢に立たされるという。

 ただ大型スーパーが苦戦する一方で、ホールセールと呼ばれる会員制倉庫型の小売りを手掛けるコストコ(Costco)は8月下旬に中国で第5店目を浙江省(Zhejiang)杭州市(Hangzhou)で始めるなど好調だ。許准教授によれば、郊外に大型店舗を持ち会員に直売するホールセールの経営スタイルは、賃貸料や運営コストが相対的に低いため、Eコマースによる打撃が比較的少ないという。

 また、一部の小売チェーンが「社区」と呼ばれる団地の敷地内などに小規模な生鮮食品店など出店を増やす流れが顕在化している。消費者の好みが細分化し生活のリズムが加速化する中で、生活圏により近いこうした小規模店の利便性が重宝されているようだ。

 一定の世代以上には、中国にモノがなかった時代の記憶がまだ鮮明に残っているはずだ。この国の変化の早さに改めて驚かざるを得ないが、人びとの価値観や生活スタイルが変わり、新たな技術が次々と登場する中で、かつて宝箱のように見えた大型スーパーも役割を終え、消費や小売りのあり方を根本から考え直す必要のある社会に成長したのかもしれない。(c)東方新報/AFPBB News