【11月12日 AFP】中国に滞在している北朝鮮の労働者や商人の目に、国境再開の兆しはまだ、見えていない。

 中国北東部・遼寧(Liaoning)省丹東(Dandong)。北朝鮮と、その最大の経済パートナーである中国との貿易の実態をうかがい知ることができる数少ない窓口だ。

 しかし2020年1月、感染拡大する新型コロナウイルスへの対応から国境は閉鎖され、2国間の商取引は停止。数千人の北朝鮮人も、中国側で足止めを食らうこととなった。国境閉鎖から3年半以上が経過したが、いまだに多くの人が帰国できずにいる。

 AFPの取材班は9月、丹東を訪れた。そこには北朝鮮料理を提供する飲食店が並び、店内では女性たちが歌や踊りを披露していた。彼女たちはコロナ禍前は接客係として働いていたという。

 女性たちは帰国を望んでいるが、いつ帰れるかは分からないと口をそろえる。北朝鮮ビールの専門店では「(国境がいつ再開するか)知っていますか」と、接客係の女性から質問された。この店の女性2人は、インターンとしてこの町にやってきたと話した。

 国連は、核兵器開発の資金源になるとの理由で、北朝鮮の人々が国外で働くことを禁じている。しかしAFPの取材班は、今年に入ってからだけでも、北朝鮮人スタッフが働く飲食店やホテルなど計10か所を中国の3都市で確認している。

 欧米の専門家は、基本的にこうした労働者は就労先を選べず、悲惨な住環境や労働環境に置かれると指摘。また、賃金の大半を国に収める必要があるとしている。

■鉄路での貿易は再開

 中国政府は昨年、北朝鮮との鉄道経由の貿易再開を認めた。

 AFPの取材班も先月、丹東で、午前7時40分ごろに北朝鮮の新義州(Sinuiju)市へと出発し、約45分後に中国側に戻ってくる貨物列車を確認した。

 中国、北朝鮮間の貿易量は回復しつつある。それでもなお、中国税関総署のデータによると、国境閉鎖1か月前時点との比較ではまだ3割ほど低調な水準にとどまっている。