【9月25日 東方新報】中国の伝統的な祝日の一つ、中秋節が近づいてきた。旧暦の8月15日で、今年は9月29日。中秋節につきものの月餅の商戦も盛り上がっている。

 中国では中秋節を家族で過ごすのが一般的。実家に帰省して再会を喜び、名月を眺めながら月餅を食べるのが習わしだ。中秋節が近づくと、スーパーやデパートには数多くの月餅が並ぶ。ゴディバ(GODIVA)の月餅チョコ、ハーゲンダッツ(Haagen-Dazs)の月餅アイスなども登場している。

 月餅と言えば小豆や五穀、ハスの実などを餡(あん)の材料するのが伝統的だが、糖分や油脂をたっぷり使った古典的な月餅は敬遠される傾向に。中国では健康ブームが急激に高まっており、最近は「低糖」をうたう月餅が店頭に多く並んでいる。見た目もカラフルにしたりデザインに凝ったりと、SNSで「映え」を競う若者の心をとらえようとしている。

 また、ロブスター味、アワビ味、プーアール茶味、ティラミス味など多種多様な月餅も増えている。月餅の一大生産地・広東省(Guangdong)広州市(Guangzhou)の老舗・老舗料理店「広州酒家」の責任者は「伝統の味を守りつつ、ドリアン味、チーズ味なども販売しています。もちろん低糖も意識しています」と説明する。

 月餅と言えば近年、ずっと問題になっているのが「天価(高額)月餅」だ。

 中国では中秋節に知人や恩人に月餅を贈る文化があり、企業が取引先に贈るのも当たり前の行事となっている。相手の歓心を買おうと、高級ワインや貴金属とセットにした1万元(約20万円)の月餅や、31万元(約630万円)の「住宅付き月餅」、18万元(約366万円)の「純金の仏像付き月餅」なども登場した。ここまでくると、月餅の名を借りたただの賄賂にすぎない。

 中国政府はこれまで何度も豪華すぎる月餅を規制してきたが、そのたびに「抜け穴」を探して新たな天価月餅が現れてきた。しかし、昨年からは「史上最も厳しい減量令」といわれる規制を実施。包装箱は3層を超えてはならず、貴金属や高級木材マホガニーの使用を禁止した。さらに、1箱500元(約1万円)を超える月餅は「重点監視」するとしており、事実上の価格制限を導入した。

 中国メディアによると、スーパーマーケットで最近販売されている箱入り月餅は100~400元(約2033~8134円)がほとんど。ただ、「月餅」と名を付けず、高級茶やワイン、磁器の皿などと月餅を組み合わせた「ギフトセット」がインターネット上で1000~2000元(約2万~4万円)で販売されている。

 昔から「上に政策あれば下に対策あり」と言われる中国らしい動きと言えるが、数十万元もする月餅は見当たらない様子。家族や親戚が月餅を味わって夜を過ごす、本来の中秋節のあり方が少しずつ戻ってきているようだ。(c)東方新報/AFPBB News