レバノン爆発から3年、国の支援も正義もなく苦しむ被害者
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【9月9日 AFP】レバノンの首都ベイルートの港で3年前に大爆発で、すでに難病を患っていたダニー・サラーマさんの病状は悪化した。歩行器なしでは歩けなくなったが、当局からは見捨てられたように感じている。
レバノンでは経済が破綻し、政治が機能不全状態に陥っているため、政府から適切な医療と経済支援が受けられず、爆発に対する責任追及もされていないと、爆発で負傷し、傷害を負った人々はAFPに訴える。
サラーマさんは港に程近い自宅アパートで、「国は私たちのことを忘れてしまった」と穏やかな声で話した。「車も、家も、仕事も、動ける体も失った。それでも支えてくれない」
2020年8月4日に起きた爆発事故では220人以上が死亡し、少なくとも6500人が負傷した。当局は、大量の肥料用硝酸アンモニウムが長年不適切に保管されていた港湾地区の倉庫で火災が発生し、爆発が起きたとしている。
元サウンドエンジニアのサラーマさんは15年、自己免疫疾患の一種である多発性硬化症と診断された。
アパートの屋上テラスにいたサラーマさんは、爆風でテラスの片側からもう片側まで吹き飛ばされた。大きなけがはなかったが、ショックで持病が悪化し、歩行が困難になった
多発性硬化症治療薬は月140ドル(約2万円)、年2回の注射は1000ドル(約14万円)かかる。さらに、1万ドル(約146万円)の手術をする必要があるという。
だがサラーマさんは家族からの支援で生活しており、できる仕事も限られているため、必要な医療を受けることができない。もう何か月も多発性硬化症の薬を買えていないと話す。
7月には転倒し頭を数針縫ったため、8月の取材時には頭に包帯を巻いていた。