【8月3日 東方新報】近年中国では民宿業がホットな分野になり、多くの人びとが続々とこの商売に加わっている。民宿の予約プラットフォームを運営する「途家民宿」(Tujia)が7月24日、メディア交流会を開催、その席で「Z時代民宿経営者神作レポート」を発表した。

 レポートによると、同プラットフォームに2023年上半期に新たに加わった民宿経営者の7割がZ世代(95年以降生まれ)で、19年同期に比べ5割も増加した。Z世代にとって民宿経営は単に就業や起業の機会であるだけでなく、柔軟な社交と個性を表現できる空間を得られるようだ。

■小都市の民宿の予約数5倍増

 今年上半期、同社の予約数トップ10は、成都市(Chengdu)、北京市、西安市(Xian)などの有名都市が占めたが、増加率が目立って高かったのはいくつかの小都市だった。

 山東省(Shandong)の淄博市(Zibo)や威海市(Weihai)、福建省(Fujian)の泉州市(Quanzhou)、浙江省(Zhejiang)の湖州市(Huzhou)などはコロナ前に比べ増加率が5倍(予約数の比較で6倍)と、驚異の伸びを示した。「連休中の小都市の観光客数は予想を上回ったが、民宿の軒数も効率よく増加したので、収容力を確保できた」と同社は言う。

 消費行動から見ると、民宿の利用者は当たり前の平凡な旅行を嫌い、より深い体験を求めている。同社が扱う民宿では宿泊プラン1000元以上の予約数が19年に比べ30パーセント近く増加した。その中で、伝統的住居を利用した民宿、田舎の民宿、山や海の景色が楽しめる民宿、自家で手入れをした庭園を持つ民宿などおすすめラベル付きの宿泊施設の予約数は、なんと50~180パーセント増加したという。「民宿の客は固有の品質や特色に対してその対価を払う傾向にある。これが小都市の消費回復に効果を上げている」、同社の劉楊(Liu Yang)主席商務官はこう分析する。

■高学歴Z世代が田舎の民宿経営に、新しい手法で農村振興

 同プラットフォームには田舎の民宿経営に身を投じた数万人のZ世代が参加しており、SNSメディアを民宿のプロモーションに活用して、辺鄙(へんぴ)な農村を「山水に囲まれた美しい家」に変身させているという。

 同レポートによると、高学歴はZ世代の経営者の代名詞で、大学本科卒以上が50パーセントを占める。またZ世代の経営者は何でも自力で取り組むことが好きで、なんと95パーセント以上が自らの手で民宿を切り盛りしている。

 インターネットの原住民ともいえるZ世代は、民宿経営にとって持って生まれた優位性がある。激烈な競争の中で自分の経営する民宿をいかに突出させるか、多くのインターネットプラットフォームを通して「民宿にまつわる物語」や「見どころ紹介」など民宿の露出度を高める工夫をして、外地の観光客がその名を慕って足を運ぶようになっている。

■民宿業は就職の新しい選択肢に、今年新たに百万人の就職チャンス増加

 民宿オーナーになる以外に、民宿の管理人もまた最もホットな新職業だ。人力資源社会保障部が22年6月、「民宿管理者」「家庭教育指導師」など18種の新職業を発表し、「新版職業分類大全」に加えた。民宿の管理人が新職業として初めて表舞台に登場した。

 求人プラットフォームには、23年の年初わずか1週間で、ホテル・民宿業界からの投稿が殺到した。観光宿泊業界の求人数は前年同時期に比べ増加率7割超えだという。劉楊氏は、今年の民宿業界が直接的、間接的にもたらす雇用機会はおよそ百万件に上ると見る。

 民宿産業がもたらす波及的な影響もまた無限の広がりが想像できる。広西チワン族自治区(Guangxi Zhuang Autonomous Region)北海市(Beihai)の民宿村の例をとると、ここでは村全体が民宿を原点として観光客向けのさまざまな商売の自己完結的なループ空間を形成している。観光客の住の需要を満足させる同時に、村民が連携して飲食提供や食品加工、特産品販売、食品スーパー、観光ガイド手配などあらゆるサービスを提供する。このような民宿周辺産業は、観光客の潜在的な消費意欲を刺激し、村民に収入増をもたらす無限空間となっている。

「民宿業界に身を投じる人たちは多かれ少なかれロマン主義精神の持ち主だ。彼らは『半分は商売、半分は生活』という働き方で、収入を得る目的のほか、交友、文化体験、田園への愛着の気持ちなど、同時にいくつものことを満足させようとしている」、劉楊主席商務官はこのように見ている。(c)東方新報/AFPBB News