【7月14日 東方新報】中国で女性の権利と言えば、「天の半分を支える人(半辺天)」という毛沢東(Mao Zedong)氏の言葉が有名だ。中国では共働きが一般的であり、仕事という意味では女性の社会進出は進んでいる。女性が中国社会の半分を支えているというのは決して大げさではない。反面、農村などでは男尊女卑の意識が残り、跡継ぎに男児を望む傾向があるといわれる。

 そんな中国の農村で意識改革が起きているという。農村に暮らす女性のチャイナドリームを、中国メディアは次のように伝えている。

 中国内陸部の湖南省(Hunan)江永県(Jiangyong)祖石江鎮は、墨絵画に描かれるような典型的な中国の農村である。この農村で生まれ育った30代の女性、宋春姣(Song Chunjiao)さんは、中国の少数民族ヤオ族の民族衣装を着て、ほぼ毎日、スマートフォンの前に立つ。背景にはミカン畑が広がっている。

「このミカンには、つや出しワックスを使っていません。樹に実っている状態で自然に熟した自然のミカンです。皮は薄く、果肉は柔らかく、ミカンそのものの味がしますよ」。宋さんは手塩にかけて育てたミカンをスマートフォンの向こうにいる客たちに即売しているのだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大が広がった2020年以降、中国では、産地直送で農産品を即売するライブコマースが急速に広がった。スーパーマーケットが閉鎖された後の巣ごもり需要に加えて、食の安全への関心が高まり、スマートフォン越しとはいえ、生産者の顔が見える食材への需要の波が押し寄せたのだ。

 それまで内職でわずかな現金を稼ぐだけだった宋さんの転機は、江永県が募集したEコマース講座の案内を見たことだった。スマートフォンを使って、SNSなどで商品情報を拡散し、顧客からの問い合わせに返信したり、注文を確認して商品を発送したりする一連の作業を真剣に学んだのだ。

 最初は中国のメッセージアプリ「微信(ウィーチャット、WeChat)」のグループチャットで友人向けに販売していたが、評判はよく、すぐにショート動画投稿サイト「抖音(Douyin)」などでも販売するようになった。現在、宋さんは300万人のフォロワーを抱えるまでになり、村の特産品であるザボンやグレープフルーツなど約1000トンが売れている。

 中国ではライバーの男女比は圧倒的に女性が多い。宋さんも村のライブコマースの責任者になり、月収5000元(約10万円)を超えるようになったという。

 こうしたデジタルを活用した農村の女性活躍は全国的に注目され、中国の社会団体である中国女性発展基金会(China Women's Development Foundation)とショート動画投稿サイト「快手(Kuaishou)」が協力して、農村に暮らす女性にライブ配信や動画編集の技術を教える講座を設けた。昨年は山西省(Shanxi)内4か所で女性向け電子商取引研修を実施し、1000人以上が参加したという。

 世界経済フォーラム(WEF)が男女平等度を順位にした「ジェンダーギャップ指数2023」によると、中国は調査対象となった146か国のうち107位(日本は125位)と決して誇れる順位ではなかった。しかし、ライブコマースなどで農村の男女の経済格差が縮まれば、来年以降の順位に反映される可能性もありそうだ。「農村の女性の地位向上のカギは経済的な自立」と研究者たちは口をそろえる。

 折しも、今の中国ではフェミニズムが多くの層から関心を集めている。日本のフェミニズムをけん引してきた社会学者の上野千鶴子(Chizuko Ueno)東大名誉教授の著作約20冊が翻訳出版され、売れているという。毛沢東氏のスローガン「天の半分を支える人」に続く、女性の権利向上に向けた第二幕が上がったともいわれる。

 コロナ禍前は、宋さんのようなデジタルに強い女性が農村に誕生し、経済をけん引する存在になるとは誰も予想しなかっただろう。日本の農村でも特産品を売ってくれるライバー候補を募集してはどうか。中国の農村に負けてはいられない。(c)東方新報/AFPBB News