【7月29日 AFP】フェンシング世界選手権(FIE World Fencing Championships 2023)でロシア選手との握手を拒否して失格となっていたウクライナのオリガ・ハルラン(Olga Kharlan)が28日、国際オリンピック委員会(IOC)からパリ五輪の出場権を与えられた。

 自身もフェンシングで五輪出場経験のあるIOCのトーマス・バッハ(Thomas Bach)会長がハルランに書簡を送り、必要なポイントの有無にかかわらず来年のパリ五輪の出場権を確約した。

 バッハ会長は書簡の中で「特殊な状況を考慮し、残りの期間で出場権を獲得できない場合、2024年パリ五輪の追加出場枠をあなたに割り当てる」と記した。

 国際フェンシング連盟(FIE)もハルランの出場停止を取り消し、これから行われる世界選手権の団体戦出場を認めることを明らかにした。FIEの会長は、IOCと協議した上での判断だとしている。

 今回の決定にロシア側が反発するのは必至とみられる。ロシア五輪委員会(ROC)のスタニスラフ・ポズドニャコフ(Stanislav Pozdnyakov)会長は同日、IOCがハルランの失格を受け、前日に各国際競技連盟に対してウクライナ選手への配慮を求めたことを非難。テレグラム(Telegram)に「IOCが政治的対立の中でどちらに味方するかを選び、その利益のために行動し始めた」と投稿していた。

 世界選手権で通算4度の優勝を誇るハルランは、27日に行われた女子サーブル個人で「個人の中立選手(AIN)」として出場したロシア出身のアンナ・スミルノワ(Anna Smirnova)と対戦した。ロシアによるウクライナ侵攻後、フェンシングのウクライナ選手がロシアやベラルーシの選手と剣を交えるのはこれが初めてだった。

 ハルランはスミルノワに勝利した試合後の握手をせず、代わりに剣を突き合わせようと申し出た。スミルノワは敗戦に加え、握手を拒否されたことに憤慨し、試合場に1時間近く残って抗議した。

 国際フェンシング連盟(FIE)の規則では、試合後に対戦相手と握手をすることが定められているが、ハルランは代わりに剣を突き合せることは「問題ない」とFIEの会長から事前に確認を取っていたと試合後に明かしていた。(c)AFP/Clément VARANGES