【7月14日 CGTN Japanese】中国中部安徽省・合肥市に小さな中国式クレープ巻き「巻餅(チュエンピン)」店があります。店主の亢金明さん(50)はこれまで30年の間、巻餅を売るかたわら書道の練習を続けてきました。その字のうまさから、周囲の人々は彼を「巻餅屋の書道家」と呼んでいます。

 亢さんの店は繁華街の野菜市場の入り口にあります。広さ5平方メートル足らずの小さな店の入り口に貼られたメニューや価格表はどちらも非常に秀麗な筆文字で、店内には筆、墨、紙、すずりが並び、彼の書もたくさん貼られていて、店というよりちょっとした書斎のようです。

 毎日巻餅を売る合間に、亢さんは紙や筆を取り出して字を書きます。字を書く場所は店の後ろにある小さな低いテーブル。亢さんは、そんな環境も気にすることなく、心の中に字がありさえすれば練習できるとし、「私にとって、字を書くのは休憩みたいなものだ。そこに座って字を書くと気持ちが落ち着いてくる」と語りました。

 亢さんの妻は自宅で中学生の娘の世話をしており、店はほとんど彼一人で切り盛りしています。朝6時に店を開け、夜10時に閉めるまで、彼は毎日この小さな部屋に最低でも16時間とどまり、巻餅を作っている以外の時間はほとんど筆で字を書いています。貼った作品の数が増えるほど、この小さな店に来店する人も増えてきました。ある客は、亢さんの店を撮影してネットに投稿しました。この情報を知った多くのネットユーザーや観光客がネット上で話題になったこの店に巻餅を買いに訪れるほか、自分の子供を連れてたたずまいを味わうために訪れる親も多くいます。亢さんは「少しでも子供たちの啓発になれば」と言います。

 亢さんは「好きなことができるのは楽しい」と言います。彼は独学で書道を学びました。毎晩店を閉めた後が、亢さんが書道に専念する時間です。冷蔵庫の上に板を1枚かぶせてようやく紙を敷けるスペースができます。暑くて息苦しい小さな店で彼はいつも2時間以上書道に取り組んでいます。

 独学で書道を学ぶ亢さんは手本となる数冊の本を、破れるまで読み、携帯には何万枚ものお手本の画像が保存されています。うまく書けない字については、彼はお手本を切り取って、店の中の、目を上げればすぐ見える場所に貼ります。商売の最中は手で字を書けないので、頭の中で書きます。亢さんは「習うより慣れろ、慣れれば才能の不足は埋められる。実は毎日結構疲れるが、私はあまり苦にしていない」と言います。

 亢さんは自分が書道で成果を上げるだけでなく、自分のこの根気良さと楽しみで周りの多くの人に影響を与えています。暇があれば、彼はボランティアとしてコミュニティの子供たちに書道を教え、書道を練習する心得と楽しみを分かち合っています。

 亢さんは毎週末に向けて、詩や散文、名言などのカードや書き付けを書いておき、巻餅を買いに来た人に応じて異なるカードを選んで送ります。亢さんの書いたカードには「楽」と「趣」の字が最も多く、「好きなことにこだわり、好きなことができるのは幸せであり、楽しみだ。この楽しみをより多くの人々に伝えたい」ということです。

 しばらく前、亢さんは書道教室から専任の先生になって欲しいと言われましたが、断りました。地道に店を営んで、楽しく字を書くことができるという今の生活が気に入っている彼は、書道が自分の平凡な生活におけるささやかな楽しみになることを望んでいます。(c)CGTN Japanese/AFPBB News