【3月6日 東方新報】人工知能(AI)の分野において米国としのぎを削る中国でも、米国発のチャットGPT(ChatGPT)の革新性への驚きと、今後の運用へ期待が熱く語られている。

 チャットGPTとは、アメリカの人工知能開発機関オープンAIが、2022年11月に発表したチャットボット。テキストで質問を入力すると、質問者の意図を組んで自然な言葉で回答してくれる。簡単な質問だけではなく、論文を書いたり、小説を書いたり、音楽を作ったりすることもできる。コンテンツを自動的に作り出す生成AIだ。

 チャットGPTが1億人のアクティブユーザーを獲得したのは、発表からわずか2か月。中国発の動画共有サイト・ティックトック(TikTok)の9か月という記録を塗り替えた。

 米ボストンコンサルティンググループ(BCG)でデジタル分野の中国エリアを担当するジェフ・ウォルター(Jeff Walters)氏はチャットGPTと生成AIについて「今年は広告分野での活用が進み、AIが自動的に作ったコピーや映像が使われるだろう」と期待を寄せる。一方、「金融、航空、医療など精度が要求されミスが許容されない業界においては、AIの更なる発展が必要だ」と予想する。

 中国はAI分野で世界一を目指している。2017年から21年までで中国のAIの産業規模は2.6倍に増加。2021年から22年9月までAIに関する世界の論文のうち28%は中国のもので、この点においてはすでにアメリカを凌駕(りょうが)している。

 近年では、チャットGPTのような自然言語で質問や文章作成ができる大規模言語モデルの開発競争が注目されてきた。中国では、2021年6月に北京智源人工智能研究院が中心となって開発した悟道2.0(Wudao)が発表された。悟道2.0はチャットGPTの前身となるGPT-3の10倍のパラメーターを持ち、この技術をベースにした中国初のバーチャル女子大生「華智氷(Hua Zhibing)」が名門・清華大学(Tsinghua University)に入学したことでも話題になった。

 そうした中での、チャットGPTの登場だった。いやおうなくこの技術に追いつけ追い越せの議論が加熱する。

 2月13日に北京市経済情報化局が発表した「2022年北京人工知能産業発展白書」では、トップ企業がチャットGPTを目標にした大規模モデルを開発することへの支持を表明、オープンソースの枠組みなどの構築に力を注ぐとしている。

「チャットGPTは回答の論理性と完成度において、はるかに国内の大規模モデルの上を行っているし、回答速度でも先行している」

 こう話すのは北京のAI企業「遠鑑(Fosafer)」の鄭榕(Zheng Rong)氏。同氏は、両者の差にはデータの質が関係すると見る。AIの進化には、大量のデータを与える必要があるが、全世界のインターネット上での中国語のデータの質は英語のそれに比べ、明らかに劣っている。この問題を克服するために「我々は中国語と英語という異なる言語のデータを補完する方法を探さなくてはならない」という。

 チャットGPTのような大規模モデルには膨大な計算量が必要となり、そのために開発には莫大(ばくだい)な資金が必要となる。

 北京航空航天大学(Beihang University)人工知能研究院の胡坤(Hu Kun)氏は、国の政策によって開発資源を有効活用する必要性を説く。「ほとんどの企業は人工知能を発展させるための膨大な計算などの消耗を担いきれない。国家が政策レベルで関連するリソースを整合させることを提案する。例えば、統一の計算プラットホームを確立して、各企業で計算リソースが分かれたり重複したりしている状態を解消すれば、それぞれの協力を促して互いに利益を得られるようになる」

 チャットGPTが、米中の科学技術分野の競争において大きなインパクトを与えたのは確かだが、それがもたらす社会の変化は未知数だ。活用分野の拡大や更なるイノベーションへの期待と共に、倫理や規制の問題も避けては通れない。チャットGPTの世界はまだ始まったばかりだ。ちなみにこの原稿はチャットGPTが書いたものではない。(c)東方新報/AFPBB News